小物部品の精密加工を支える技術力!ワイヤーカット加工の全てを解説

2025年10月1日
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有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

小物部品の試作開発や少量生産でお困りではありませんか。「複雑な形状を高精度で作りたい」「硬い材料に追加工が必要」「熱の影響を避けたい」といった課題に直面している方も多いでしょう。

そんな悩みを解決する技術が「ワイヤーカット加工」です。私たち榊原工機は、この技術を駆使して「手のひらサイズの部品なら何でも加工OK」をモットーに、お客様の困難な要求にお応えしています。

今回は、ワイヤーカット加工の基礎から応用まで、精密加工のプロの視点で詳しく解説します。

ワイヤーカット加工とは?基礎知識を分かりやすく解説

ワイヤーカット加工は、正式には「ワイヤー放電加工」と呼ばれる特殊な加工方法です。一般的な切削加工とは全く異なる原理で材料を加工します。

加工の仕組みを詳しく説明

ワイヤーカット加工は、非接触で材料を除去する画期的な技術です。その仕組みを順を追って説明しましょう。

まず、直径0.05mm~0.3mm程度の極めて細いワイヤー(電極線)を使用します。この細いワイヤーは、まるで髪の毛のような太さです。材料には真鍮やタングステン、モリブデンなどが使われ、常に新しい部分が供給されるように巻き取り式になっています。

次に、このワイヤーと加工したい材料(ワーク)の間に、数ミクロンという極めて狭い隙間を保ちます。この隙間に電圧をかけると、連続的に微細な火花(放電)が発生するのです。

この火花は瞬間的に超高温となり、ワーク表面の一部を溶融・気化させます。溶けた材料は微粒子となって除去され、これが高速で繰り返されることで、ワイヤーが移動した軌跡に沿って材料が切り取られていきます。

加工中は純水などの加工液が常に供給され、放電熱を冷却しながら溶融した微粒子を洗い流します。この冷却効果により、ワーク全体への熱影響を最小限に抑えることができるのです。

従来の切削加工との決定的な違い

一般的な切削加工では、回転する刃物で材料を物理的に削り取ります。しかし、ワイヤーカット加工は電気的なエネルギーで材料を除去するため、全く異なる特性を持ちます。

最も重要な違いは「非接触加工」であることです。ワイヤーが材料に直接触れないため、切削抵抗による歪みや振動が発生しません。これにより、極めて高い精度での加工が可能になります。

また、材料の硬さに加工性が左右されないのも大きな特徴です。切削加工では硬い材料ほど工具摩耗が激しくなりますが、ワイヤーカット加工では電気的な現象を利用するため、材料の硬さはほとんど問題になりません。

ワイヤーカット加工の5つの大きなメリット

ワイヤーカット加工が精密加工において重要な役割を果たしているのには、明確な理由があります。ここでは主な5つのメリットを詳しく解説します。

1. ミクロン単位の超高精度加工が可能

ワイヤーカット加工の最大の強みは、その驚異的な加工精度です。ミクロン単位(1/1000mm)の公差が要求される部品にも安定して対応できます。

これは非接触加工であるため、切削抵抗によるワークの歪みや機械の振動が発生しないからです。例えば、金型部品では±0.002mmという極めて厳しい公差が要求されることがありますが、ワイヤーカット加工なら安定してクリアできます。

実際の現場では、自動車エンジンの燃料噴射ノズルのような、わずかな寸法のズレが性能に大きく影響する部品の製造に活用されています。このような部品では、従来の切削加工では達成困難な精度が求められるのです。

2. 複雑形状と微細加工への対応力

細いワイヤーを使用するため、切削工具では不可能な複雑形状や微細加工を実現できます。特に内角の加工において、その真価を発揮します。

通常の切削加工では、工具の直径により内角にどうしても丸み(R)が残ってしまいます。しかし、ワイヤーカット加工なら、R0.05mm程度まで限りなくシャープな内角を実現可能です。

例えば、精密な歯車の歯形加工や、電子部品の微細なスリット加工などで威力を発揮します。スマートフォン内部のコネクタ部品のような、極めて微細で複雑な形状も、プログラム通りに正確に加工できるのです。

また、0.1mm以下の薄い壁を持つ部品も、加工時の歪みや破損のリスクを抑えて安定して製作できます。これは軽量化や省スペース化が求められる現代の製品開発において、非常に重要な要素となっています。

3. 高硬度材への確実な対応

「焼入れ鋼に追加工は可能か」という質問をよくいただきますが、ワイヤーカット加工なら答えは「YES」です。

材料の硬さに加工性がほとんど左右されないため、HRC50~65を超える非常に硬い素材(焼入れ鋼、超硬合金、セラミックスの一部)にも対応できます。これは切削加工では工具摩耗が激しく、加工自体が困難とされる領域です。

実際の事例として、プレス金型の修正加工があります。長期間使用した金型は摩耗により寸法が変化しますが、既に焼入れされているため切削での修正は困難です。しかし、ワイヤーカット加工なら、硬度を保ったまま精密な修正加工が可能になります。

特殊合金についても同様です。チタンやインコネル、ハステロイなどの難削材も、ワイヤーカット加工なら安定して加工できるため、航空宇宙や医療分野での活用が広がっています。

4. 熱影響と加工歪みの最小化

精密部品の加工において、熱による影響は大敵です。ワイヤーカット加工は、この問題を根本的に解決します。

放電による瞬間的な熱は発生しますが、加工液による効果的な冷却により、ワーク全体が高温になることはありません。そのため、熱歪みや残留応力を最小限に抑えることができます。

これは特に、既に熱処理が施された部品や、熱に敏感な材料の加工において重要です。例えば、精密測定器の部品では、わずかな熱歪みでも測定精度に影響するため、ワイヤーカット加工が不可欠となります。

また、薄肉部品の加工においても、この特性は大きなメリットとなります。切削加工では加工熱により薄い部分が変形しやすくなりますが、ワイヤーカット加工なら安定した寸法精度を保てるのです。

5. バリ・カエリの発生抑制

加工後の仕上げ作業の軽減も、ワイヤーカット加工の大きなメリットです。

非接触加工であるため、切削加工で発生しやすいバリやカエリ(加工面にできる突起)がほとんど発生しません。これにより、後工程のバリ取り作業が大幅に削減され、製品の品質向上と製造コスト低減に貢献します。

特に硬い材料のバリは除去が困難で、時間とコストがかかります。医療機器部品のように、わずかなバリも許されない用途では、この特性は極めて重要です。

知っておくべきワイヤーカット加工の制約事項

優れた特性を持つワイヤーカット加工ですが、いくつかの制約も存在します。これらを理解して適切に活用することが重要です。

加工対象材料の制限

ワイヤーカット加工は電気的な放電を利用するため、導電性を持つ材料に限定されます。

対応可能な材料は、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタンなどの金属類、そしてグラファイトなどです。一方、一般的な樹脂やセラミックス(一部の導電性セラミックスを除く)は加工できません。

ただし、私たち榊原工機では多様な設備を保有しているため、樹脂加工についても他の方法で対応可能です。材料選択でお困りの場合は、最適な加工方法をご提案いたします。

加工速度と生産性の考慮

ワイヤーカット加工は、切削加工と比較すると加工速度が遅いという特性があります。

これは放電による材料除去が、機械的な切削よりも時間を要するためです。そのため、大型部品や単純形状の大量生産には不向きな場合があります。

しかし、複雑形状や高精度が要求される部品では、後工程の削減効果により、トータルの生産時間は短縮される場合も多々あります。コストと納期を総合的に判断し、最適な加工方法を選択することが重要です。

加工形状の特性

ワイヤーカット加工は、基本的にワークを貫通する形状の加工が主体となります。

これは、ワイヤーを上下のガイドから通す必要があるためです。盲穴(底のある穴)やポケット加工は、ワイヤーカット単独では実施できません。

ただし、あらかじめ他の加工方法でスタート穴を開けておけば、内部の閉じた形状を加工することは可能です。このように、他の加工方法との組み合わせにより、制約を克服できる場合も多くあります。

榊原工機のワイヤーカット加工における独自の強み

私たちがワイヤーカット加工で高い評価をいただいているのには、明確な理由があります。それは単に高性能な機械を保有しているだけでなく、独自の強みを活かしているからです。

「考えて動く多能工エンジニア」の存在

榊原工機の最大の強みは、「考えて動く多能工エンジニア」の存在です。私たちは「いつも頭を旋盤のように高速回転させてベストな加工法を考えています」。

ワイヤーカット加工で超高精度を実現するには、単純にNCデータを作成するだけでは不十分です。ワイヤーの特性、材料の性質、加工条件、そして加工順序まで総合的に考慮した緻密なプログラミングが必要になります。

例えば、複数の部品を同時に加工する場合、切り離し順序を間違えると、部品の自重による変形で精度が狂ってしまいます。こうした細かなノウハウの蓄積が、安定した高精度加工を可能にしているのです。

長年の経験により、ワイヤーの微細な挙動や材料特性を熟知したエンジニアが、お客様の要求を確実に形にします。

「手のひらサイズ」部品への特化

「手のひらサイズの部品なら何でも加工OK」というのが、私たちの得意分野です。

小物部品の精密加工では、大型部品とは異なる技術とノウハウが必要になります。微細な形状では、わずかな振動や温度変化でも精度に影響するため、より繊細な制御が求められるのです。

スマートフォン部品、医療機器の微細部品、精密センサー部品など、現代の電子機器に欠かせない小型精密部品の製造において、このノウハウが活かされています。

特に試作開発段階では、まだ量産を前提としない少数の部品を、高精度で製作する必要があります。このような要求に対し、私たちは柔軟かつ迅速に対応できる体制を整えています。

難削材・高硬度材への豊富な経験

「焼入れ鋼に追加工は可能か」というお客様の質問に、私たちは自信を持って「YES」とお答えします。

これまで数多くの難削材・高硬度材の加工を手がけてきた経験により、材料特性に応じた最適な加工条件を把握しています。同じ焼入れ鋼でも、炭素量や合金成分により最適な条件は異なるため、この経験値が重要になるのです。

例えば、金型材料のSKD11(冷間工具鋼)とSKH51(高速度工具鋼)では、同じ硬度でも放電特性が異なります。このような材料ごとの特性を理解し、最適な加工条件を設定することで、安定した品質を実現しています。

特殊合金についても同様です。航空宇宙分野で使用されるインコネルやハステロイ、医療分野のチタン合金など、それぞれに最適化された加工ノウハウを蓄積しています。

多彩な産業分野での活用事例を紹介

ワイヤーカット加工は、その優れた特性により、様々な産業分野で活用されています。具体的な事例を通じて、その可能性をご紹介します。

金型・治具分野での活躍

金型製造は、ワイヤーカット加工が最も威力を発揮する分野の一つです。

プレス金型では、パンチとダイの隙間(クリアランス)が製品品質を左右します。この隙間は通常0.05mm~0.1mm程度と極めて狭く、ミクロン単位の精度が要求されます。ワイヤーカット加工なら、このような厳しい精度要求にも安定して対応できます。

実際の事例として、自動車部品のプレス金型製作があります。複雑な3次元曲面を持つパネル部品の金型では、従来の切削加工では実現困難なシャープな内角や、複雑な抜き勾配が必要でした。ワイヤーカット加工により、設計通りの形状を高精度で実現し、高品質な製品の安定生産を可能にしました。

射出成形金型においても、樹脂の流動性を左右する微細な流路加工で威力を発揮します。特に、精密な医療機器部品の成形では、わずかな形状の違いが製品性能に影響するため、ワイヤーカット加工の高精度が不可欠となっています。

自動車・航空宇宙分野での貢献

自動車産業では、燃費向上と性能向上の両立が求められており、部品の軽量化と高機能化が進んでいます。

エンジン部品では、燃料噴射ノズルの微細穴加工にワイヤーカット技術が活用されています。燃料の微粒化性能を高めるため、直径0.1mm以下の極めて細い穴を高精度で加工する必要があり、従来の切削加工では限界がありました。

航空宇宙分野では、さらに厳しい要求があります。ジェットエンジンのタービンブレードには、冷却効率を高めるための複雑な内部流路が設けられており、この加工にワイヤーカット技術が不可欠です。

実際の事例として、航空機エンジン部品の製造では、インコネルという超耐熱合金を使用します。この材料は1000度を超える高温に耐える一方、切削加工が極めて困難です。ワイヤーカット加工により、この難削材を高精度で加工し、エンジンの高効率化に貢献しています。

医療機器・半導体製造装置での重要な役割

医療機器分野では、人体への安全性と高い機能性の両立が求められます。

内視鏡の先端部品では、直径数ミリの極小空間に、光学系、撮像素子、照明などを組み込む必要があります。この制約の中で最大限の性能を実現するため、部品の微細化と高精度化が不可欠です。

例えば、内視鏡用の微細なレンズホルダーでは、光軸のずれが画質に直結するため、±0.005mmという極めて厳しい位置精度が要求されます。ワイヤーカット加工により、このような精密部品を安定して製造できています。

半導体製造装置では、さらに厳しい清浄度と精度が求められます。ウェハーを保持するチャック部品では、微細な塵一つでも製品不良の原因となるため、表面粗さとバリの発生を最小限に抑える必要があります。

実際の製造現場では、シリコンウェハーの検査装置用プローブ部品の製造にワイヤーカット技術を活用しています。プローブ先端の形状精度が検査精度を左右するため、サブミクロン単位の精度管理が必要です。ワイヤーカット加工の非接触特性により、この厳しい要求をクリアしています。

電子部品・精密機器での活用拡大

現代の電子機器の小型化・高機能化により、部品の微細化が急速に進んでいます。

スマートフォン内部のコネクタ部品では、限られたスペースに多数の接点を配置する必要があり、部品の形状は年々複雑になっています。接点間の絶縁距離確保のため、0.05mm程度の極細スリットが必要な場合もあり、従来の切削加工では実現困難でした。

時計産業では、伝統的な機械式時計の復活により、精密な歯車加工の需要が高まっています。時計の歯車は直径数ミリながら、歯形精度が時計の精度を左右するため、極めて高い加工精度が要求されます。

実際の事例として、高級機械式時計のムーブメント部品製造では、モジュール0.1という極小歯車の加工にワイヤーカット技術を活用しています。歯先の丸みや歯底の形状まで厳密に管理することで、長期間安定した時計精度を実現しています。

他の加工方法との効果的な組み合わせ

ワイヤーカット加工の真価は、単独使用だけでなく、他の加工方法との組み合わせでも発揮されます。

切削加工との戦略的組み合わせ

私たちは「機械は5軸か複合加工機なら穴加工まで1台でできるけど、今日は埋まっている。特急案件だから、すぐ動けるマシニングと旋盤で工程を組もう」という柔軟な発想で対応しています。

効率的な生産のためには、各加工方法の特性を理解し、適材適所で使い分けることが重要です。例えば、大まかな形状はマシニングセンタで高速切削し、精密な内角や微細形状はワイヤーカットで仕上げるという組み合わせが効果的です。

実際のプロジェクトでは、複雑な3次元形状の試作部品において、5軸加工機で外形を粗加工した後、ワイヤーカットで製品機能に関わる精密スリットを加工しました。これにより、加工時間の短縮と高精度の両立を実現できました。

ワンストップソリューションの提供

お客様からは「加工に困った、納期に困った。いろいろ相談するよりも榊原工機1社で解決できることが多い」と評価いただいています。

複数の加工方法を組み合わせることで、お客様の多様な要求にワンストップで対応できます。これにより、複数業者への発注や品質管理の手間を省き、開発期間の短縮とコスト削減に貢献しています。

設計段階からの提案も行っており、製品の機能を満たしながら製造コストを最適化する設計変更提案も可能です。このような総合的なサポートにより、お客様の製品開発を強力にバックアップしています。

気軽に相談できる「あたたかい町工場」の環境

私たちの工場は「工場らしくない外観が自慢」「あたたかい町工場」として、多くのお客様に親しまれています。

アットホームな相談環境

木のぬくもりと緑にあふれた外観は、従来の工場の無機質なイメージを覆しています。ホームセンターとお風呂屋さんに挟まれた立地で、1階で金属加工を行い、2階には木の温もりを感じる事務所があります。

「階段下のピンポンを押して」いただければ、時には人懐っこい黒猫のノア君もお出迎えすることもあります。このようなアットホームな環境だからこそ、お客様は技術的な悩みや漠然としたアイデアでも気軽に相談していただけます。

密なコミュニケーションによる最適提案

「もしもお急ぎの場合は、社長はお話し好きなのでメールで返信を待つより、電話して事情を説明することをお勧めします」という言葉が示すように、人間味あふれるコミュニケーションを重視しています。

技術相談では、お客様の熱い思いや細かなニュアンスをじっくりと聞き、多能工エンジニアたちが持つ豊富な知見と設備を融合させ、最適な加工方法を一緒に見つけ出します。

このような密な対話を通じて、単なる図面通りの加工ではなく、製品の本来の目的を理解した上での最適な提案を行っています。お客様のものづくりパートナーとして、技術面だけでなく、開発プロセス全体をサポートする姿勢を大切にしています。

まとめ:精密加工の課題解決はお任せください

ワイヤーカット加工は、現代の精密加工において不可欠な技術です。その高精度、複雑形状対応力、高硬度材への対応力は、従来の加工方法では実現困難な製品開発を可能にします。

私たち榊原工機は、この優れた技術を「考えて動く多能工エンジニア」の知恵と経験で最大限に活かし、お客様の困難な要求にお応えしています。小物部品の試作開発から少量生産まで、どのような課題でもお気軽にご相談ください。

あなたのものづくりの夢を現実にするため、私たちは技術と知恵を総動員し、全力でサポートいたします。

お問い合わせ先

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