なぜ榊原工機は金属も樹脂も加工できるのか?材質を問わない精密加工技術の秘密

2025年10月5日
#ブログ
有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

製品開発に携わる皆さんは、こんな経験をお持ちではないでしょうか。

「この新素材、どこに頼めばいいんだろう?」 「金属と樹脂を組み合わせた部品を作りたいけど、それぞれ別の業者に依頼するしかないのかな?」 「チタンでこの複雑な形状は加工できるのだろうか?」

実は、多くの製造業者が特定の材質に特化している中で、私たち榊原工機は「金属も樹脂もご相談ください」をモットーに、幅広い材質への加工に対応しています。今回は、なぜ当社が材質を問わない加工技術を実現できているのか、その秘密をご紹介します。

現代のものづくりが直面する材質の多様化

現代の製品開発において、材質の選択肢は飛躍的に拡大しています。従来の鉄やアルミニウムに加え、軽量で高強度なチタン合金、耐熱性に優れる特殊ステンレス、電気絶縁性の高いエンジニアリングプラスチック、そして様々な複合材料まで、選択肢は無数にあります。

なぜこれほど材質が多様化したのか

スマートフォンを例に考えてみましょう。本体のフレームには軽量で美しいアルミニウム、内部の精密部品には樹脂、カメラレンズには特殊ガラス、そして基板には銅が使われています。これら全て異なる材質ですが、それぞれに選ばれる理由があります。

アルミニウムは軽くて強度があり、美しい表面仕上げが可能です。樹脂は電気絶縁性があり、複雑な形状を成形しやすく、軽量です。特殊ガラスは光学特性に優れ、銅は電気伝導性が高いという具合です。

材質選択の難しさ

しかし、これらの材質はそれぞれ全く異なる特性を持っているため、加工方法も大きく変わります。

例えば、アルミニウムは比較的軟らかく切削しやすい材質ですが、樹脂の中でも特にPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)のような高性能樹脂は、熱に弱く、切削時の発熱で溶けやすいという特徴があります。チタンは生体適合性に優れる素晴らしい材質ですが、加工時に火花が出やすく、工具の摩耗も激しいため、非常に加工が困難とされています。

このように、材質ごとに全く異なるアプローチが必要なため、多くの加工業者は得意分野に特化しているのです。

試作開発におけるスピードの重要性

製品開発の初期段階では、複数の材質で試作品を作り、性能や耐久性を比較検討することが重要です。しかし、材質ごとに異なる業者を探し、それぞれと調整を行うのは時間も手間もかかります。

私たちのところには「来週のプレゼンまでに、3種類の材質で同じ部品を作りたい」といったご相談が頻繁にあります。このような急な要望にお応えできるのも、当社の強みの一つです。

榊原工機が実現する「考えて動く多能工」の技術力

当社の最大の特徴は、機械を操作するだけでなく、お客様の課題を深く理解し、最適な解決策を考え出す「考えて動く多能工のエンジニア」がいることです。彼らは「いつも頭を旋盤のように高速回転させて、ベストな加工法を考えています」。

豊富な材質加工経験

当社のエンジニアは、長年の経験から様々な材質の特性を熟知しています。

金属系では、アルミニウム、ステンレス、真鍮、鉄鋼材、チタン、焼入れ鋼など。樹脂系では、POM(ポリアセタール)、PEEK、MCナイロン、フッ素樹脂、アクリルなど。これらの材質それぞれが持つ硬さ、粘り、熱膨張率、加工硬化のしやすさなどを理解し、最適な加工条件を判断します。

例えば、ある日「焼入れ鋼の追加工は可能か?」というお問い合わせをいただきました。焼入れ鋼は非常に硬く、通常の切削加工では工具がすぐに摩耗してしまいます。しかし、当社ではワイヤーカット加工という電気的な加工方法を使うことで、硬さに左右されることなく、精密な加工を実現しました。

クリエイティブな問題解決

「Why are we CREATIVE?」という当社の哲学の通り、エンジニアたちは既存の概念にとらわれません。

ある複雑な樹脂部品の加工依頼で、通常のマシニングセンタでは工具の長さが足りず、深い溝を加工できない案件がありました。この時、エンジニアは「材料は角から削ろうか、丸から削ろうか」と供給形態から見直し、最終的に旋盤加工と組み合わせることで解決策を見出しました。

また、「5軸加工機と複合加工機は今日は埋まっているが、特急案件だから、すぐ動けるマシニングと旋盤で工程を組もう」といった柔軟な対応も日常茶飯事です。このような臨機応変な判断ができるのは、複数の加工技術を習得している多能工だからこそです。

多様な加工技術の習得

当社のエンジニアは「旋盤、マシニング、ワイヤー加工が特に得意」とありますが、実際にはこれ以上に幅広い技術を持っています。

特定の機械だけでなく、材質と形状に応じて最適な加工方法を選択し、時には複数の加工方法を組み合わせて理想的な製品を作り上げます。この多能工であることが、材質を問わない対応力の根幹となっているのです。

多様な設備群が支える柔軟な生産体制

技術力のあるエンジニアも、それを活かす設備がなければ力を発揮できません。当社では「柔軟な小ロット生産を実現するバリエーション豊かな設備群」を整備しています。

NC旋盤による丸物部品加工

NC旋盤は、回転する材料に切削工具を当てて、シャフトやピン、ブッシュ、ネジなどの丸物部品を加工する機械です。

金属では、ステンレス、アルミ、真鍮、鉄鋼材など、樹脂では、POM、MCナイロン、アクリル、フッ素樹脂まで幅広く対応します。材質ごとに切削速度や送り速度を調整し、真円度や表面粗さを最適化しています。

例えば、医療機器用のチタン製ピンの加工では、生体適合性を損なわないよう、切削油を使わずに低速で慎重に加工を行いました。一方、アクリル樹脂の装飾品では、透明度を保つため、極めて細かい送りで美しい表面仕上げを実現しています。

マシニングセンタによる箱物・板物加工

マシニングセンタは、固定した材料に対して切削工具が動き回り、箱物や板物、複雑な穴や溝を加工する機械です。

金属系のアルミ、ステンレス、真鍮、鉄鋼材から、エンジニアリングプラスチック全般まで対応できる汎用性の高い設備です。材質によって異なる切りくず処理やバリ対策を考慮し、最適な工具と加工条件を設定します。

航空宇宙関連の部品で、軽量化のため複雑なポケット加工が施されたアルミ部品を製作した際は、薄肉部分の変形を防ぐため、段階的に少しずつ材料を除去していく工夫を凝らしました。

5軸加工機による複雑形状加工

5軸加工機は、通常のX、Y、Zの3軸に加え、工具やワークを傾けたり回転させる2つの回転軸を同時に制御できる高度な設備です。

高硬度材やチタン、特殊合金を含む様々な金属の加工で威力を発揮します。複雑な三次元自由曲面や多面加工を一度の段取りで実現し、特に工具姿勢を最適化することで、難削材の加工効率と工具寿命を向上させます。

「5軸加工技術から生まれた高級ゴルフパター『SAKAKI PUTTER』開発ストーリー」では、チタン合金の特性を最大限に活かした美しい曲面を実現しました。この加工には、5軸同時制御による滑らかな工具パスが不可欠でした。

ワイヤーカット加工による高精度加工

ワイヤーカット加工は、髪の毛ほどの細い金属線(ワイヤー)に電気を流し、放電によって材料を溶かして加工する方法です。

電気を通す導電性材料(金属、グラファイトなど)に限られますが、特に焼入れ鋼や超硬合金といった高硬度材、熱影響を嫌う精密部品の加工で唯一無二の能力を発揮します。非接触加工のため、材料の硬さに左右されず、熱歪みや加工歪みが極めて少ないのが特徴です。

時計部品の製作では、ミクロン単位の超高精度で、極めてシャープな内角や複雑な自由曲線を加工し、お客様から「まるで芸術品のよう」と評価いただきました。

「手のひらサイズ」小物部品への特化がもたらす優位性

当社は「手のひらサイズの部品を中心に、小物部品なら何でも加工OK!」を得意分野としています。この特化が、材質を問わない対応力とどう関係するのでしょうか。

微細加工における材質の影響

小型部品では、材質のわずかな特性の違いが加工結果に大きく影響します。

例えば、直径1mmの細い穴を開ける場合、アルミニウムなら比較的簡単ですが、ステンレスでは工具の折れるリスクが高まります。樹脂の場合は、切削熱でバリが発生しやすく、さらに細心の注意が必要です。

当社では、このような微細加工における材質ごとのノウハウを豊富に蓄積しています。過去に直径0.3mmの穴を様々な材質で加工した実績があり、それぞれに最適化された工具と加工条件のデータベースを構築しています。

多品種少量生産との相性

小型部品は、多品種少量生産や試作開発の対象となることが多く、様々な材質での試作が頻繁に発生します。

ある電子機器メーカー様からは「同じ形状で、アルミ、ステンレス、樹脂の3種類を各5個ずつ」といった依頼を定期的にいただいています。このような要望に迅速に対応できるのは、当社が「少量・試作にトコトン強い会社」であることと、材質を問わない対応力を併せ持っているからです。

精密さへの追求

手のひらサイズの小物部品では、わずかな誤差も許されません。

腕時計の部品製作では、100分の1ミリメートル単位での精度が要求されました。この時、真鍮、ステンレス、チタンの3種類の材質で同じ部品を製作しましたが、それぞれ熱膨張率が異なるため、室温での加工寸法を微調整する必要がありました。こうした繊細な対応ができるのも、長年の経験と蓄積された技術力があってこそです。

お客様にもたらす具体的なメリット

榊原工機の材質を問わない対応力は、お客様に以下のような価値を提供しています。

製品開発サイクルの劇的短縮

試作段階で複数材質での検証は不可欠ですが、従来は材質ごとに業者を探す必要がありました。

ある自動車部品メーカー様では、新商品の開発で「アルミ、樹脂、ステンレスの3種類で同一形状の試作品が必要」というケースがありました。従来なら3社に分散発注していたものを、当社1社で対応することで、発注から完成まで2週間短縮できました。

これは、材質間での設計調整や品質確認の手間が省けたことに加え、当社内でのスケジュール調整により効率的な生産が可能になったためです。

デザイン自由度の飛躍的向上

材質の制約がなくなることで、設計者は純粋に機能やデザインに集中できます。

家電製品の筐体設計では、「軽さを優先したいならアルミ、強度なら鉄、コストなら樹脂」と、要求仕様に応じて最適な材質を選択できます。当社では、それぞれの材質で同じデザインを実現する技術を持っているため、設計者の自由な発想をそのまま形にできます。

コストとサプライチェーンの最適化

複数業者への分散発注は、管理コストと時間を要します。

「加工に困った、納期に困った。いろいろ相談するよりも榊原工機1社で解決できることが多い」というお客様の声の通り、当社は「機械部品加工の駆け込み寺的存在」として、お客様のサプライチェーン簡素化に貢献しています。

実際に、月間20種類以上の異なる材質・形状の部品を当社1社で対応させていただいている企業様もあり、調達業務の効率化に大きく寄与しています。

アットホームな環境が生む技術革新

当社の工場は「工場らしくない外観が自慢」「あたたかい町工場」として親しまれています。木のぬくもりと緑にあふれた外観は、お客様が技術相談しやすい雰囲気づくりを大切にしています。

気軽に相談できる環境

ホームセンターとお風呂屋さんに挟まれた場所にある当社では、2階の木の温もりを感じる事務所で、人懐っこい黒猫のノア君がお出迎えすることもあります。

このようなアットホームな環境だからこそ、「この特殊な樹脂、こんな加工できるかな?」「チタンでこの形状は無理かな?」といった技術的な相談を気軽にしていただけます。硬い雰囲気の工場では話しにくい、まだ漠然としたアイデア段階でのご相談も大歓迎です。

密なコミュニケーションから生まれる最適解

「お急ぎの場合は社長がお話し好きなので、メールで返信を待つより電話して事情を説明することをお勧めします」という通り、当社では人と人とのつながりを重視しています。

お客様の熱い思いや細かなニュアンスをじっくりお聞きし、多様な設備と技術を組み合わせて最適な加工方法を一緒に見つけ出します。これは、高度な技術だけでなく、人間味あふれるコミュニケーションがあってこそ実現できることです。

まとめ:あなたのアイデアを現実に

私たち榊原工機が材質を問わない加工を実現できるのは、「考えて動く多能工のエンジニア」「バリエーション豊かな設備群」「小物部品への特化」という3つの柱がしっかりと支えあっているからです。

そして何より、お客様との密なコミュニケーションを通じて、技術的な課題を共に解決していく姿勢が、当社の最大の強みです。

金属でも樹脂でも、従来材でも新素材でも、どのような材質でもお気軽にご相談ください。私たちは「ものづくりの駆け込み寺」として、お客様のあらゆる課題に全力でお応えします。

お問い合わせ

電話:0568-36-1628 受付時間:9:00-18:00(12:00-13:00を除く) ※2024年1月より9:00-17:00に変更 休日:土・日・祝日

所在地 〒486-0932 愛知県春日井市松河戸町2-5-15

お急ぎの場合は、メールよりもお電話が確実です。あなたのものづくりの夢を、一緒に現実にしましょう。