樹脂も金属も!手のひらサイズの部品加工で材質を問わない対応力の秘密

2025年11月28日
#ブログ
有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

はじめに:試作開発における材質選定の難しさ

私たち有限会社榊原工機は、愛知県春日井市で「機械部品加工の駆け込み寺」として、日々様々なお客様の課題解決に取り組んでいます。

特に手のひらサイズを中心とした小物部品の少量・試作案件では、開発の途中で材質が頻繁に変更されることがあります。最初はアルミで設計していたものが、強度が必要だとステンレスに変わったり、絶縁性が求められて樹脂に変更されたり。こうした材質変更は、試作開発では日常茶飯事です。

このとき困るのが、部品加工メーカーから「うちは金属専門なので樹脂は無理です」「この材質は対応できません」と断られてしまうことです。材質ごとに業者を探し直すのは、時間もコストもかかります。

当社では「手のひらサイズの部品を中心に、小物部品なら何でも加工OK。金属も樹脂もご相談ください」という方針のもと、材質を問わず様々な加工に対応しています。お客様からも「加工に困った、納期に困った。いろいろ相談するよりも榊原工機1社で解決できることが多い」と評価いただいています。

では、なぜ当社が金属も樹脂も高い精度で加工できるのか。その秘密は、多能工のエンジニアたちが持つ知恵と、バリエーション豊かな設備群の活用にあります。本記事では、材質を問わない対応力がどのように実現されているのか、具体的にご紹介します。

金属加工の特性と課題:強度と熱との戦い

金属部品は、その強度や耐久性、導電性などの機能性から、機械部品として最も多く使われる材質です。しかし、金属といっても種類は様々で、それぞれに加工上の課題があります。

高硬度材への挑戦

例えば、焼入れ鋼のような硬い金属。これは通常の切削工具では刃が立たないほど硬く、加工が非常に困難です。お客様から「焼入れ後の部品にわずかな追加工が必要になった」というご相談をいただくことがあります。

こうした場合、当社ではワイヤーカット加工機を使います。ワイヤーカット加工とは、細い金属線に電気を流して放電させることで材料を溶かしながら切断する方法です。工具が直接触れないため、どんなに硬い材料でも高精度に加工できます。

また、高硬度工具を用いたマシニング加工(ハードミリング)も活用します。これは超硬合金などの特殊な工具を使って、硬い材料を削る技術です。

ステンレス特有の粘りと熱

ステンレス(SUS304など)は、錆びにくく美しい見た目から人気の材質ですが、加工においては「粘り」が大敵です。

ステンレスは切削中に粘りが強く、加工すればするほど硬くなる「加工硬化」という現象が起きます。これにより工具の摩耗が激しくなります。さらに、熱伝導率が低いため、切削時に発生した熱が逃げにくく、手のひらサイズの小物部品に熱が集中してしまいます。

熱が集中すると部品が熱膨張し、冷めた後に寸法が変わってしまう熱変形が起こります。これでは高精度な加工ができません。

当社では、適切な送り速度の設定と大量のクーラント(冷却液)供給で熱を管理します。また、旋盤とマシニングセンタを連携させることで、熱の蓄積を分散させながら加工を進めます。これが、私たちのプロとしての対応です。

真鍮やアルミの特性

真鍮は比較的柔らかく切削性が良いため加工しやすい材質ですが、鉛フリー真鍮などは切りくずの処理に注意が必要です。

アルミは軽量で加工性も良好ですが、柔らかいため工具に溶着しやすく、表面仕上げには注意が必要です。特にアルマイト加工(表面処理)を施す場合、切削面の精度と面粗度が最終的な品質に直結するため、前工程の管理が重要になります。

樹脂加工の特性と課題:熱と低剛性への対策

樹脂(プラスチック)は、軽量で絶縁性に優れ、デザインの自由度も高いため、電子機器や医療機器などで広く使われています。しかし、金属とは全く異なる課題があります。

低融点との戦い:溶けやすい材質

多くの樹脂は融点が低く、切削時の摩擦熱ですぐに溶けてしまいます。高速で削ると、樹脂が溶けて工具に付着する「溶着」という現象が起こり、仕上げ面が荒れてしまいます。

ある時、お客様から「透明なアクリル板を精密に加工してほしい」というご依頼がありました。アクリルは特に熱に弱く、切削熱で白く濁ったり、ヒビが入ったりします。

このケースでは、回転数を落として熱の発生を抑え、さらにクーラントを大量に供給することで、透明度を保ったまま高精度な加工を実現しました。金属加工とは真逆のアプローチです。

低剛性:たわみやすい材質

樹脂は金属に比べて強度が低く、切削加工中に部品がたわみやすいという特徴があります。

例えば、薄いプラスチックの板を削る場合、工具の押す力で材料がしなってしまい、狙った寸法が出ません。手のひらサイズの小物部品でも、この「たわみ」は大きな問題です。

対策としては、固定治具の設計が非常に重要になります。金属加工では強く締め付けて固定しますが、樹脂の場合は「極めて弱い力で、広範囲から優しく支える」治具設計が求められます。締め付けすぎると樹脂が変形してしまうからです。

吸湿性と寸法変化

ナイロンなどの一部の樹脂は吸湿性が高く、湿度によって寸法が変化します。加工直後は良好だった寸法が、数日後に測定すると変わっているということも起こります。

こうした材質特性を理解し、加工後の環境変化も見越した寸法管理が、高精度な部品加工には不可欠です。

多能工が実践するクリエイティブな問題解決

材質を問わずベストパフォーマンスを実現する秘訣は、多能工のエンジニアが「頭を旋盤のように高速回転」させ、保有する設備群を最大限に活用する、クリエイティブな思考プロセスにあります。

材質に最適化された治具設計

手のひらサイズの小物部品において、金属であれ樹脂であれ、加工精度を保つ鍵は「いかに歪ませずに固定するか」という治具設計にあります。

金属の場合、切削抵抗が大きいため、固定治具には高い強度と剛性が求められます。しかし、締結圧が強すぎると小物部品が歪むため、均一に保持するクリエイティブな設計が必要です。

樹脂の場合は、低剛性のため「極めて弱い力で、広範囲から優しく支える」治具設計が求められます。また、熱を逃がすための治具の材質選定や、クーラント供給経路の設計も重要になります。

当社では、こうした治具の設計自体を、ワイヤーカット加工機なども駆使して高精度に内製できる能力があります。だからこそ、材質ごとの最適な加工法を実現できるのです。

設備の柔軟な使い分け

金属と樹脂では、最適な加工法も異なります。多能工は、材質と形状に応じて、バリエーション豊かな設備群を柔軟に使い分けます。

例えば、高精度が求められる金属部品の場合、5軸加工機や複合加工機を用います。複合加工機とは、旋盤とマシニングセンタの機能を1台に統合した機械で、「穴加工まで1台でできる」工程集約が可能です。部品を付け替える回数が減るため、高精度を維持しやすくなります。

特に削り出しが求められるオリジナルグッズ(当社のSAKAKI PUTTERなど)の金属部品加工では、5軸加工技術が不可欠です。

一方、樹脂加工においては、一気に削ることで熱を逃がす、あるいは逆に回転数を落として熱発生を抑えるといった、クリエイティブな加工プログラムが必要です。

ある時、急ぎの樹脂部品加工の依頼があり、理想的な複合加工機が「あいにく今日は2台とも埋まっている」という状況がありました。多能工は瞬時に「すぐ動けるマシニングと旋盤で工程を組もう」と判断し、材質特性を考慮した最適な作業分担を設計しました。これがクリエイティブなものづくりです。

仕上げと表面処理までの一貫対応

金属も樹脂も、切削加工が終われば、機能性を高めるための仕上げや表面処理が必要です。

金属の仕上げには、研削加工やホーニング加工、あるいはブラスト加工(強度向上やサビ防止)が適用されます。特にアルミ部品の表面処理であるアルマイト加工は、切削面の精度と面粗度が耐食性や硬度に直結するため、前工程の管理が重要です。

樹脂の場合は、切削後のバリが残りやすく、その除去と、要求される機能性(滑らかさ、透明性など)に合わせた研磨や表面処理が必要です。

この最終的な品質まで見据えた一貫した加工法の設計こそが、当社の専門性の証明です。

お客様からの信頼:1社完結の価値

金属も樹脂も、そして高精度な小物部品の少量・試作に対応できる能力は、お客様からの揺るぎない信頼の基盤となっています。

機械部品加工の駆け込み寺として

お客様から「加工に困った。納期に困った。いろいろ相談するよりも榊原工機1社で解決できることが多いです」と評価いただけるのは、材質が金属か樹脂かにかかわらず、すべての部品加工の難題を一元的に解決できる当社の総合力があるからです。

この1社で解決できる能力は、材質ごとに外注先を変える必要がなく、品質認識のギャップも発生しにくいため、特にガレージブランドや個人ブランドの試作開発を含めた、不安定な少量・試作の現場で大きなメリットとなります。

複数の業者に依頼すると、それぞれの品質基準が異なり、図面の解釈にも差が生まれます。結果として、組み立て時に部品が合わないといったトラブルが起こります。当社なら、そうした心配がありません。

迅速な対応とプロのコミュニケーション

金属も樹脂も含む特急案件の対応には、技術力だけでなく、意思決定のスピードが不可欠です。

当社では、急ぎで部品加工を発注するときのコツを公開しており、迅速な対応を重要視しています。もしお急ぎの場合は、「社長はお話し好きなのでメールで返信を待つより、電話して事情を説明することをお勧めします」。

直接対話を通じて、材質や手のひらサイズといった制約条件を瞬時に共有し、多能工がベストな加工法を迅速に設計します。電話なら、その場で「それなら、こういう方法でいけますよ」と即答できることも多いのです。

業界のプロが認める技術力

当社の金属も樹脂も扱う精密切削加工の技術水準は、外部のプロフェッショナルにも認められています。2024年4月には、月刊「機械技術」2024年5月特別増大号に掲載されました。

また、「工場っぽくない外観が自慢」であり、「木のぬくもりと緑にあふれたあたたかい町工場」という環境は、1階で金属を加工しながらも、お客様が材質や加工法に関するクリエイティブな相談を気兼ねなく持ち込める心理的な安心感を提供しています。

まとめ:材質を問わない対応力は多能工の知恵の結晶

手のひらサイズの小物部品加工において、金属も樹脂も高い加工精度で対応できる能力は、単なる設備の豊富さだけではありません。

材質ごとの課題(金属の粘りや熱、樹脂の低融点と低剛性)を予測し、クリエイティブな加工法を編み出す多能工のエンジニアたちの知恵と経験に集約されます。

私たち榊原工機は、頭を旋盤のように高速回転させる思考プロセスと、複合加工機や5軸加工機といったバリエーション豊かな設備群を駆使することで、お客様の少量・試作における材質を問わない難題を、常にベストパフォーマンスで1社で解決し続けます。

金属も樹脂も含む小物部品の部品加工でお困りの際は、精密切削加工のプロであり、機械部品加工の駆け込み寺である私たちに、ぜひご相談ください。お客様のクリエイティブなものづくりを、全力でサポートいたします。