ザグリ加工の今むかし
今日はザグリ加工の話をします。
そもそもザグリって何のためにあるのか。たとえば六角穴付きボルト、いわゆるキャップボルトがありますよね。あのボルトの頭が製品の表面から出っ張らないように、頭がすっぽり収まる段付きの穴を掘る。これがザグリです。
M4の六角穴付きボルトなら、頭の直径は7ミリ、頭の高さは4ミリ。だからザグリ穴は径8ミリ、深さ4.4ミリというのが標準寸法です。頭の高さより0.4ミリ深くしてあるのは、締めたときに頭が絶対に出ないようにするための逃がしです。
つまりザグリの目的は「ボルトの頭を出さないこと」。逆に言えば、深さが0.1ミリ、0.2ミリ深くなったところで、機能上は何の問題もないんです。
このザグリのために、昔から「段付きドリル」という便利な工具があります。ボルトの下穴とザグリ穴を一本で同時に加工できる、ボール盤用に開発された優れものです。町工場では長年これが定番のやり方でした。
ただ、ボール盤の深さ目盛というのは、正直けっこうアバウトなんですよね。目盛を合わせて加工しても、狙い4.4に対して4.5になったり4.3になったり。だからノギスで測って調整しながら狙いに寄せていく。これが昔ながらの町工場の仕事でした。
ところが今の時代、ザグリの深さにも公差が入るようになってきました。プラスマイナス0.1。検査で「0.12深いのでNGです」「0.13浅いのでNGです」と、100分台の数字で不良と言われることが実際にあるんです。
作る側からすると、正直、納得のいかない気持ちもあります。ザグリはボルトの頭を出さないための穴です。1ミリ2ミリ違えばもちろんNGですが、100分の2、3で機能に影響があるのか、と。その部品がどう使われるかを知らないまま、数字だけで判定される。そこに理不尽さを感じることもあります。そしてこれが確実にコストアップの要因にもなっています。
段付きドリルなら5分で終わる加工が、公差保証となるとマシニングセンターでエンドミル加工となり、10分、15分かかる。実際、当社でも段付きドリルの出番はどんどん減って、マシニングでの加工が増えているのが現状です。
何が正しいのか。それはお客様それぞれの考え方によると思います。単品まで全数公差に入ったものを納めるのが正義だという会社。用途を理解した人が判断して、機能に影響のない多少の外れは許容するという会社。どちらもあると思います。
ただ、私たちの立場での結論はひとつです。図面の公差にきちんと入ったものを納める。これが正解です。理不尽に感じることがあっても、それが今の時代に求められる品質です。
時代の流れとともに、作り方も変わってきました。ボール盤と段付きドリルの時代から、マシニングセンターで100分台の公差を保証する時代へ。今日はそんな、作る側のささやかな苦悩と覚悟のつぶやきでした。