ハイスドリルと超硬ドリル
昨日のエンドミルに続いて、今日はドリルの話。ハイスドリルと超硬ドリルです。
これもまた昔の話、50年前に戻ります。50年前のハイスドリルといったら、もちろんコーティングなんてなかったので、普通のHSS鋼。よく売られている黒いドリル、それだけでした。今みたいなコーティングされた金色のドリルとか超硬ドリルなんてものはなかった。いや、もしかしたらあったのかもしれないけれど、一般の町工場にはありませんでした。
そして当時はドリル立てに、1ミリ、1.1、1.2、1.3……2ミリ、2.1、2.2、2.3……3ミリ、3.1、3.2、3.3という具合に、ドリルがずらーっと立っていたんですよね。旋盤にはドリル立てとともに加工、フライスにもドリル立てとともに加工、というふうにやっていた。一人ひとりがドリルを管理していたわけです。
近年はどうかというと、ハイスのドリルもまだまだ使いますが、超硬のドリルも使います。たとえばM5タップの下穴なら普通は4.2ミリ。これは「しょっちゅう使うドリル」なので超硬を買う、という形になっていく。ハイスも使うけど超硬も使う、というのが今のほとんどの現場の現状じゃないかなと思います。
能率がいいのはやっぱり超硬ドリル。でもハイスドリルのいいところは「折れにくい」こと。汎用機で「ドリル折れちゃいました」ということが、ハイスなら少ないんですね。だからうちも汎用機まわりではハイスのドリルを使っています。ですが、マシニングセンターやNC旋盤になってくると、もうほぼほぼ超硬ドリルが主流。皆さんの会社はどうでしょうか?
ただ、ありがちな話をひとつ。たまにしか使わないドリル、たとえば10.9ミリとか7.8ミリとか。そういうあまり使わないドリルまで、現場の人は何でも超硬で買っちゃったり、何でもハイスのコーティングドリルを買っちゃったり──まあまあ無駄買いをしているのも事実なんですよね。
それから近年驚いたことのひとつ。昔はハイスの黒いドリルが、鉛筆のようにだんだん短くなっていったんです。汎用機がメインだったので「折れてさようなら」が少なかった。でも今はコンピューター制御の機械で使うことが増えたので、「折れてさようなら、そしてドリルはなくなりました」が増えています。
もちろん超硬ドリルの方が回転数を上げて送りも速くできて、加工としては神なんですけれど、たまにしか使わないドリルはあえて黒いハイスのドリルを買う、というのもひとつの手だと思います。いま超硬ドリルは本当に値上がりしているので、現場でも「節約」を考えてほしいなと思いました。
ちなみにうちでは、直径の大きなドリルはハイスばかりです。なぜなら、使う機会が少ないから。25Φの穴あけを量産するなら、スローアウェイ式の超硬ドリルを買いますからね。
ハイスドリルのいいところは、自分で研ぎやすいこと。深穴なんかだと、溝を自分で研いで深くして切粉のはけを良くするとか、先端の118度を片側だけ当たるようにして切粉の出方を良くするとか、そんな職人のテクニックもあるんです。ただ実際にそれをやると、下穴寸法の管理ができなくなるという面もあって、そういう使い方はどんどん減ってきているところですね。
ローテクからハイテクへ。属人的で職人任せだった加工が、誰でもできる加工へ。それを実現してきたのが超硬ドリルなんだと思います。