提案・試作事例

[プロに聞きました]部品を安く作るには? 金属加工のプロが教える、現実的なコストダウン術

製造業で部品調達を担当していると、「もっと安く作れないだろうか?」と考えることが多いと思います。見積を取ったら予算オーバーで、顧客や営業担当、上司から「半額にしてくれ」なんて言われて頭を抱えている……調達担当者の多くがそんな経験をされていることと思います。

そこで今回は、部品調達担当者の永遠のテーマ「もっと安く作らないだろうか?」について、金属加工歴40年以上のプロ、有限会社榊原工機の榊原社長に教えていただきました。材料費、人件費、消耗品費が軒並み上昇している今、現実的にコストダウンを実現するにはどうすればいいのか……。プロの視点から包み隠さず教えていただきましたので、ぜひご一読ください。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

「半額で作って」は日本では無理! その理由とは?

榊原社長のもとには「見積の半額で作ってほしい」という相談が時々寄せられるそうですが、「日本国内で工場を持ち、従業員を雇用して真面目に仕事をしていると、とても半額では作れない」というのが実情です。その背景には、ここ数年の急激なコスト上昇があります。材料費は言うまでもなく、人件費も上がり続けています。さらに旋盤やマシニングセンターで使う切削工具などの消耗品費も値上がりしており、加工メーカーを取り巻く環境は厳しさを増しています。

「『早く・安く・高品質』という3つの要素を全て満たすのは、正直難しくなっています。町工場が半値で仕事を請けると間違いなく赤字になりますので、それを繰り返すと倒産への道まっしぐらです」と榊原社長は率直に語ります。では、どうすれば現実的にコストダウンできるのでしょうか? 榊原社長が教えてくれたのは、次の3つの方法です。

部品を安く作る3つの方法

1. まとめて頼む

一つ目のポイントは「まとめて発注する」ことです。部品を1個、2個と小分けに発注するのではなく、何百枚もの図面をまとめてご依頼いただくことで、スケールメリットが生まれます。

「例えば500枚分の図面をまとめて発注いただければ、材料をまとめて調達できるので、材料の調達にかかる輸送費などの付帯費用も含めて下げることができます。特に同じ材質の部品が複数ある場合、定尺材から効率よく取れるように最適化することで、材料の歩留まりも向上します」(榊原社長)

コストだけではなく、工程集約による効率化も大きな利点です。

「たとえば当社では、旋盤で加工した部品をそのまま社内のマシニングセンターで追加工するなどして、部品の移動時間や段取替え時間を大幅に短縮しています」(榊原社長)。確かに、複数の会社を経由する場合に発生する輸送費や待ち時間のロスがなくなるのは、見えにくいけれど大きなメリットですね。

また「調達担当者の工数削減」というメリットもあります。従来なら複数社への見積依頼、価格交渉、進捗管理に要していた人件費を考えると、一括発注のメリットは金額以上に大きくなります。

「お客様からよく言われるのは『榊原工機に手配を任せて時間が浮いた分、他の重要な業務に集中できるようになった』ということです。これって、実は相当な価値があると思いませんか?」と榊原社長。「当社で取りまとめることで、結果的にお客様にとってのトータルコストパフォーマンスが向上する。そういう提案ができるように、日々心がけているんですよ」ということでした。

2. 納期に余裕を持つ

二つ目のポイントは「納期に余裕を持つ」ことです。「今日発注して明日納品」というような特急案件は、どうしてもコストが高くなってしまいます。既存の生産スケジュールを調整し、材料を急いで手配し、場合によっては残業対応も必要になるからです。

逆に言えば、納期に余裕があれば、効率的な生産計画を立てられます。夜間の無人運転を活用したり、材料の在庫状況に合わせて加工順序を組んだりと、コストを抑える工夫の余地が広がるのです。

3. 海外調達を受け入れる

三つ目のポイントは「海外調達をOKとする」ことです。
前述の通り、国内で特急生産しようとすると、安くするのに限界があります。ですが海外調達を前提にして、納期に余裕をいただければ、国内で特急生産するよりも安く提供することができます。

「海外調達というと品質が気になるかもしれませんが、榊原工機には長年お付き合いのある協力工場がありますので大丈夫です。万一、日本に届いてから何か不具合があったとしても、榊原工機が全て責任を持ちますので安心してご依頼いただけます」

実際、「海外調達で構わないけど、品質については榊原工機に責任を持ってほしいので、貴社にまとめて発注します」という使い方をされているお取引先もいるそうです。

海外調達の実際のところ

では、海外調達というのは実際のところ、どうなっているのでしょうか。輸送や品質管理について、もう少し詳しく伺いました。

輸送方法と送料の実態

海外調達で気になるのが輸送方法と送料です。以前は船による混載便を使うことが多かったので、送料が安くても名古屋港まで引き取りに行く必要があったり、通関業者に依頼する必要があったりと、手間と費用がかかっていました。

ただ、「今はDHLなどの国際宅配便を使って飛行機で運んでもらうことが多いですね。DHLが通関までやって届けてくれるので、届いた荷物を開封して検査して、納品するだけになっています。海外調達のハードルはかなり下がっていると思います」(榊原社長)

ただし重量には注意が必要です。重量品を海外調達すると海外調達でも送料が高くなってしまい、コストメリットが薄れるケースも多いとのこと。目安としては1個30kg以上の重量品について、部品のサイズや重量も考慮して、海外調達が適しているかどうかを判断する必要があります。

品質保証の考え方

榊原工機では、海外で製造した部品についても、社内で出荷前検査を必ず実施しています。

「海外の協力先から届いた部品を一度開封して、社内の三次元測定機などで検査しています。もし公差から外れているなどの不具合が見つかれば、すぐに社内の設備で修正または再製作にかかります。出荷時点では必ず良品になっていますので、安心してご依頼いただけるようにしています」

特に、組付け後、最終的に海外に輸出する予定の製品の場合、後から不具合が判明しても修正対応が難しくなるので、品質保証がより重要になります。そのため「中国加工で手配して良いので、榊原工機に取りまとめてほしい。責任を持ってほしい」というご依頼も増えているそうです。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も
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海外調達した部品の例。榊原工機の協力会社は品番表記や梱包も丁寧。

国内加工を選ぶメリットにも注目を

ここまで海外調達のメリットをお伝えしましたが、もちろん日本国内で加工するメリットもたくさんありますのでご確認ください。

短納期対応が必要な場合

「明日までに」「今週中に」といった短納期が求められる案件は、やはり国内加工が適しています。榊原工機では、翌営業日出荷を基本とした短納期対応を得意としており、緊急時には当日対応も可能です。

日本国内でしか手に入らない材料を使う場合

材料指定がある場合、特に日本国内でしか流通していない特殊材料を使う場合は、国内加工が必須となります。また、支給材の加工についても、品質や納期の面から国内加工が適しています。

加工について相談しながら作りたい場合

もう一つ、価格を下げる要素として挙げられるのが「適正な寸法精度・公差」です。

実は榊原工機に寄せられる加工依頼には「もしここの公差を緩くしても良ければ、加工方法や切削工具の見直しでかなり安くなるんだけど……」「この面にこの精度は本当に必要だろうか?」と悩んでしまうような案件が多くあります。当然「図面通りに作って」と言われればその通りに作りますが、相談の余地がある場合、この見直しで大きくコストダウンできるケースも多いということです。

そしてこのような相談ができるのは、加工者と話ができる国内の加工メーカーならではです。「短納期の仕事や、国産材や指定材料を使う加工、支給品の加工、精度の見直しによるコストダウンの可能性など、日本国内で加工するメリットもたくさんありますので、ぜひご相談ください」とのことでした。

まとめ:適正価格×品質保証でさまざまなメリットが生まれる

さて、部品を安く作る方法として、「まとめて頼む」「納期に余裕を持つ」「海外調達も視野に入れる」という3つのポイントをご紹介しました。その一方で榊原社長は「安かろう悪かろうでは意味がない」とも強調します。「当社では適正な利益をいただいて、その分しっかりとした品質管理と納期管理をお約束しています。無理な値下げで品質や納期を犠牲にするのではなく、効率化や工程集約によってコストを下げる。それが、お客様にとっても当社にとっても、持続可能な関係を築く道だと考えています」

愛知県春日井市にある榊原工機では、名古屋エリア、東海地方だけでなく、全国から切削加工のご依頼をお受けしています。マシニングセンター、5軸加工機、旋盤など最新設備を駆使し、1個からの単品加工から小ロット品まで対応。短納期対応も得意としています。部品調達でコストダウンをお考えの方は、ぜひ一度榊原工機にご相談ください。図面をまとめてお送りいただければ、最適な加工方法とお見積をご提案いたします。

(インタビュー・構成=ものづくりライター 新開潤子)

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