最近榊原工機では、ありがたいことにインターネットやSNS経由で旋盤加工やマシニング加工、5軸加工の見積依頼をいただくケースが増えています。ネット経由でお引き合いいただく場合、お互いに「はじめまして」のお付き合いになることが多いので、より良いコミュニケーションのためには事前の打合せが大切ですよね。
そこで今回は、榊原社長に「初回の見積依頼のポイント」と、意外にわかりにくい「部品加工の見積の内訳」について教えていただきました。

初回見積依頼のポイント①:何を優先したいか
部品加工の見積をご依頼いただく際、まずは図面やCADデータをお送りいただいて、図面にある材質や形状、寸法、公差などを踏まえて、工法や加工機、工具、工程などを検討していきます。ここで、図面に記載のない背景の情報まで教えていただけると、見積の精度が大きくアップするのです。
まず教えていただきたい背景情報は、「何を優先したいか」です。
• 「とにかく安く作ってほしい」
• 「納期を最優先したい」
• 「高精度な加工が必要」
• 「見た目の美しさを重視したい」
「加工メーカーとしては図面通りに作るのが基本ですが、お客様によって求めている機能や品質レベルが違います。それが事前に明確になっていないと、後からトラブルになりやすいんです」と、最近起きた3つの事例を紹介してくれました。どれも「事前に言ってくれれば対応できたのに…」という事例ばかりです。では順に見ていきましょう。
• 安さ重視の場合:公差内に収まるなら加工痕が多少残っても許容し、効率重視の工法を選定
• 納期重視の場合:少し単価が上がっても、工程数を減らして短納期の加工ラインを確保
• 精度重視の場合:通常より高精度な機械や特殊治具を使用し、検査工程も強化
• 美観重視の場合:仕上げ工程を追加し、梱包方法にも配慮
このように発注の背景の情報をお伝えいただけると、ご要望に沿った最適なお見積を提出できると思います。

初回見積依頼のポイント②:部品加工で守るべき基準
次にお伝えいただきたいのは「この部品加工で守るべき基準」です。実はお客様が「これくらいは当たり前」と思っていることが、会社によって大きく異なることがあります。認識の違いが生まれやすいのは次のようなポイントです。
• 「傷NG」の基準: 目視で見える傷NGなのか、顕微鏡レベルの傷もダメなのか
• 面取りの仕方: どの程度の面取りが必要なのか
• 寸法公差: すべての面で±0.01mmの公差が必要なのか、それとも組み付け面だけでいいのか
このような情報は図面に記載がない場合も多く、そして発注者側も加工者側も、会社によって標準の基準が大きく異なります。そこで、初めてのお仕事では認識の違いを防ぐため、このような背景の情報まで含めたコミュニケーションを取ることができると、品質と価格のバランスが取れた良いお仕事ができると思います。
部品加工の見積の内訳を大公開
さて、部品加工の見積は「○円×○個=○○円」という形で出てくることが多いので、発注者の皆さまにとっては根拠がわかりにくい面もありますよね。どのように算出されているのか、気になるところだと思います。
そこで旋盤加工やマシニング加工など、部品加工の見積がどのような要素から成り立っているか、内訳をご紹介します。

費用項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
材料費 | 材料の種類と加工前のサイズで決定 | 特殊材料は高額になりやすい |
加工費 | 旋盤やマシニングセンターなどの機械使用料 | 加工時間で算出するのが一般的 |
技術料 | プログラミングや段取り替え、機械オペレーション | 複雑な形状ほど高くなる |
検査料 | 出荷前の検査費用 | 榊原工機では基本的に別途請求なし |
刃物代 | 特殊な刃物が必要な場合の費用 | 焼入れ鋼切削用刃物、特殊溝入れバイトなど |
特急料金 | 通常より短納期での対応費用 | 急ぎの場合に発生することがある |
梱包送料 | 製品の梱包・配送費用 | 特殊梱包が必要な場合は別途 |
このように見積もりは様々な要素から構成されています。見積を見て「案外高いな」と感じた場合でも、一概に値引き交渉をするだけでなく、「どの部分がコストを押し上げているのか」を確認し、設計変更や材料変更、納期調整などで対応できないか相談してみるのも一つの方法です。
より良い取引のために…… 質問させてください
このような背景から、榊原工機では見積もり依頼をいただいた際に、次のような質問をさせていただくことにしました。お手数をおかけしますが、より良い提案をするために、ぜひご協力ください。
1.発注先選定で重視する点を教えていただけませんか?(複数回答可)
a.加工について相談できること
b.価格の安さ
c.納期通りに納めること
d.寸法精度
e.見た目・表面の美しさ
f.その他(ご自由にご記入ください)2.この部品の用途や機能がわかる場合は簡単に教えてください。
3.今回ご依頼の部品の加工について、特に気をつけるべきことはありますか?
「これらの質問にお答えいただくことで、より適切な加工方法や工程、機械選定ができるようになります。その結果、コストや納期の最適化につながり、お客様にとってもメリットのある提案ができます」と榊原社長は語ります。
まとめ:高品質な加工の近道は「見積依頼時の情報共有」
見積もり依頼時に少し詳しい情報をいただくことで、より適切な提案ができ、後々のトラブルも防げます。価格だけでなく、精度や仕上がり、納期など、何を重視するかをお伝えいただくことで、お客様のニーズに合った最適な加工方法をご提案できます。
愛知県春日井市にある金属加工メーカー、榊原工機では、お客様とのコミュニケーションを大切にしています。見積もり依頼の際には、ぜひ重視されるポイントもあわせてお伝えください。お客様のご要望に沿った、満足いただける加工をご提供いたします。
(聞き手=ものづくりライター 新開潤子 https://office-kiitos.biz/)
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