はじめに:ものづくりの悩み、私たちが解決します
「こんな部品が作りたいんだけど、どこに頼めばいいかな?」
先日、あるガレージブランドを立ち上げたばかりの方からこんなご相談をいただきました。手のひらに収まる小さなアルミ製部品でしたが、形状が複雑で、しかも試作段階のため数個だけ作りたいというご要望でした。
こうしたお悩みは、ガレージブランドや個人ブランドを運営される方なら一度は経験されるのではないでしょうか。
私たち榊原工機は、まさにそんな皆様の「ものづくりの駆け込み寺」として、小物部品の少量生産や試作開発を専門に手がけている町工場です。愛知県春日井市で30年以上にわたり、お客様の多様なニーズにお応えしてきました。
今日は、ガレージブランドや個人ブランドの皆様が抱える試作開発の課題と、私たちがどのようにサポートできるかについて詳しくお話しします。
ガレージブランドが直面する試作開発の課題
よくあるお悩みとその背景
ガレージブランドや個人ブランドの皆様から寄せられるご相談で多いのが、以下のような内容です。
小ロット生産の難しさ 「1個や2個だけ作りたいのですが、どこに頼んでも最低ロット数が100個からと言われてしまいます」
これは多くの製造業者が量産に特化しているためです。設備のセッティングや工程準備にかかるコストを考えると、ある程度の数量がないと採算が取れないというのが一般的な考え方なのです。
新しい素材への対応 「チタン合金を使いたいのですが、対応できる工場が見つかりません」
特殊な材料や新素材の加工には、専用の工具や加工ノウハウが必要です。多くの工場では、慣れ親しんだ材料での量産加工が中心となっており、新しい材料への挑戦を避ける傾向があります。
特急対応の困難さ 「来週の展示会に間に合わせたいのですが、可能でしょうか?」
試作品は開発スケジュールの都合上、急ぎで必要になることが多々あります。しかし、生産スケジュールが詰まっている工場では、特急対応は難しいのが現実です。
技術的な課題
ガレージブランドの製品は、大量生産品とは異なる特徴を持っています。
複雑な形状への要求 独創性を重視するガレージブランドでは、従来にない複雑な形状の部品が求められることがあります。これには高度な加工技術と豊富な経験が必要です。
高い品質基準 少数精鋭の製品だからこそ、一つひとつの品質に妥協は許されません。量産品以上の精度と仕上がりが求められる場合も少なくありません。
実際に、ある自転車部品メーカー様からは「市販のパーツでは満足できない形状を実現したい」というご相談をいただき、従来の加工方法では不可能とされていた複雑な内部構造を持つ部品の製作に成功した事例もあります。
榊原工機の「CREATIVE」なものづくりアプローチ
考え抜く設計思想
私たちが他社と大きく異なるのは、単純に「加工する」だけでなく、「どう加工すべきか」を徹底的に考え抜くことです。
例えば、先日ご依頼いただいたステンレス製の小型部品の件をご紹介しましょう。
お客様からの図面を見た瞬間、私たちの技術者は複数の加工方法を頭の中で検討し始めました。「この形状なら、角材から削り出す方法と丸棒から加工する方法、どちらが材料のムダが少なく、かつ加工時間を短縮できるだろうか?」
さらに使用する機械についても、「5軸加工機を使えば一度のセッティングで完成まで持っていけるが、今日はその機械が他の仕事で埋まっている。それならマシニングセンタと旋盤を組み合わせて、どういう工程順序にすれば最も効率的に、かつ高品質に仕上げられるか?」
このように、まるで将棋の棋士が何手も先を読むように、あらゆる可能性を検証します。
材料選定からの提案力
お客様が「この材料で」と指定されていても、私たちは必ずその用途を詳しくお聞きします。
「その用途でしたら、指定の材料よりもこちらの材料の方が加工性が良く、コストも抑えられますよ」
こんな提案をさせていただくことも多々あります。これは長年の経験から得た材料特性の知識と、お客様の製品を成功に導きたいという思いがあるからです。
実際に、あるアクセサリーブランド様では、当初真鍮での製作をご希望でしたが、用途をお聞きした結果、より軽量で肌に優しいチタン合金をご提案し、結果として製品の付加価値向上につながったケースもありました。
プログラミングと治具の工夫
NC加工機のプログラムも、私たちは標準的な切削条件をそのまま使うことはありません。
材料の特性、部品の形状、求められる精度、納期など、すべての条件を総合的に判断して、最適な切削速度や送り速度を設定します。また、部品を機械に固定する治具についても、一つひとつの形状に合わせて専用のものを設計・製作することがあります。
「そこまでやる必要があるの?」と思われるかもしれませんが、これこそが私たちの「ものづくりに対するこだわり」なのです。
少量・試作に「トコトン強い」理由
多能工エンジニアの存在
私たちの工場で働くエンジニアは、皆「多能工」です。多能工とは、複数の機械を操作できるだけでなく、工程設計から品質管理まで、ものづくりの全工程に携わることができる技術者のことです。
例えば、旋盤作業が専門の職人でも、必要に応じてマシニングセンタを操作し、ワイヤーカット加工も行います。これにより、一人の技術者が一つの部品を最初から最後まで担当することが可能になります。
この体制の最大のメリットは、「責任の所在が明確になること」と「品質の一貫性が保たれること」です。特に試作品のように、図面だけでは表現しきれない微妙な要求がある場合、一人の技術者が最初から最後まで関わることで、お客様の意図をより正確に製品に反映させることができます。
豊富な設備ラインナップ
私たちの工場には、多様な加工に対応できる設備が揃っています。
5軸加工機 これは3次元の複雑な形状を一度のセッティングで加工できる最新鋭の機械です。従来なら複数回のセッティングが必要だった複雑な部品も、一回の加工で完成させることができます。
複合加工機 旋盤加工とマシニング加工を一台で行える機械です。軸物部品の製作において、外径加工から穴加工まで一貫して行えるため、精度の向上と工期短縮を実現します。
ワイヤーカット放電加工機 髪の毛よりも細いワイヤーを使って、非常に精密な加工を行う機械です。硬い材料でも精密に加工でき、複雑な形状の抜き加工が可能です。
これらの設備を適材適所で使い分けることで、お客様の多様なニーズに柔軟に対応しています。
フレキシブルな生産体制
大手メーカーの下請けとして量産加工を行っている工場の場合、生産スケジュールが長期間にわたって埋まっていることが多く、急な試作依頼に対応することが困難です。
しかし私たちは、意図的に生産能力の一部を試作・小ロット案件のために確保しています。これにより、「来週までに何とかならないか」というご相談にも対応できる体制を整えています。
また、複数の機械で同じ加工ができるよう設備を配置しているため、一台の機械がトラブルで止まっても、別の機械で作業を継続することが可能です。
得意分野:小物部品の精密加工
手のひらサイズの部品への特化
私たちが最も得意とするのは、手のひらに収まるサイズの小物部品の精密加工です。
大きな部品の加工には大型の機械と広いスペースが必要ですが、小物部品の場合は高い精度と繊細な技術が要求されます。私たちは後者を選択し、小物部品の加工技術を極めてきました。
具体的には、直径数ミリから100ミリ程度、長さ200ミリ以下の部品を主力としています。この範囲の部品であれば、ほぼすべての形状と材料に対応可能です。
材質への対応力
金属材料
- ステンレス鋼(SUS303、SUS304、SUS316など)
- アルミニウム合金(A2017、A5056、A7075など)
- 真鍮、銅合金
- 炭素鋼、合金鋼
- チタン合金
- インコネル、ハステロイなどの難削材
樹脂材料
- POM(ポリアセタール)
- PA(ナイロン)
- PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)
- PPS(ポリフェニレンサルファイド)
- 各種エンジニアリングプラスチック
それぞれの材料特性を理解し、最適な工具選定と加工条件の設定を行います。
精密加工の技術力
私たちが誇る精密加工の技術をいくつかご紹介します。
寸法精度 一般的な部品で±0.05mm、要求に応じて±0.01mmの精度も実現可能です。これは髪の毛の太さの10分の1以下の精度です。
表面粗さ 通常の機械加工では Ra1.6μm程度ですが、私たちは Ra0.4μm以下の鏡面仕上げも可能です。
形状精度 真円度、平行度、垂直度などの幾何公差についても、厳格な要求にお応えしています。
これらの技術力により、「他では難しいと言われた」「精度が出なくて困っている」といったご相談にも対応できます。
実際のものづくり事例
SAKAKI PUTTER開発プロジェクト
私たちの技術力を最も端的に示す事例が、自社製品「SAKAKI PUTTER」の開発です。
このプロジェクトは、「私たちの技術で最高のゴルフパターを作ったらどうなるか?」という単純な疑問から始まりました。
材料選定の挑戦 一般的なパターの多くは鋳造製ですが、私たちは削り出し加工にこだわりました。材料には高級ステンレス鋼と真鍮を採用し、それぞれの特性を活かした設計としています。
5軸加工技術の活用 パターヘッドの複雑な3次元形状は、5軸加工機なくしては実現できませんでした。フェース面の微細な溝加工から、重心位置を調整するための内部空間まで、すべて一度のセッティングで完成させています。
表面仕上げへのこだわり 最終工程では手作業による磨き仕上げを行い、鏡面に近い美しい表面を実現しました。この仕上げには熟練工の技術と長時間の手間がかかりますが、それに見合う美しい製品に仕上がっています。
この経験から得たノウハウは、お客様の製品開発にも活かされています。
特急案件への対応事例
ある金曜日の夕方、アクセサリーブランドを運営されているお客様から緊急のお電話をいただきました。
「月曜日の展示会で発表予定だった新作のサンプルが、他社で仕上がりが悪くて使えません。土日も含めて何とかなりませんか?」
通常であれば物理的に不可能な納期でしたが、私たちは以下のような対応を取りました。
即座の設計検討 その場でFAXいただいた図面を基に、最短で加工できる方法を検討。材料は在庫のあるものを使用し、加工工程を最小限に絞り込みました。
週末出勤での対応 社長自らが土曜日に出勤し、マシニングセンタで加工を実施。日曜日には仕上げ作業を完了させ、月曜日の朝一番にお客様に納品することができました。
このお客様は現在も定期的にご依頼をいただく重要なパートナー様となっています。
難削材への挑戦
チタン合金の加工依頼を受けた時のことです。
チタン合金は軽量で耐食性に優れた優秀な材料ですが、加工が非常に難しい「難削材」として知られています。切削熱が発生しやすく、工具の摩耗が激しいため、多くの工場では敬遠されがちな材料です。
私たちは以下のような工夫で、この課題をクリアしました。
特殊工具の採用 チタン専用の超硬工具を使用し、切削条件を細かく調整。
冷却方法の工夫 大量のクーラントを使用し、切削点の温度上昇を抑制。
加工戦略の最適化 一度に大きく削るのではなく、細かくパスを分けて加工。
結果として、要求精度を満たしたチタン合金部品の製作に成功し、お客様には大変喜んでいただけました。
工場らしくない温かい町工場の魅力
アットホームな環境づくり
私たちの工場を初めて訪れるお客様は、必ずといっていいほど驚かれます。
「工場らしくないですね」 「まるで住宅のようです」
これは私たちが意図的に作り上げた環境です。木のぬくもりを感じる外観、緑豊かな植栽、そして2階にある木の温もりを感じる事務所。
工場は確かに1階で金属加工を行っていますが、2階の事務所は誰でも気軽に相談できる空間として設計されています。階段下のピンポンを押していただければ、いつでも温かくお迎えします。
時には人懐っこい黒猫のノア君が皆様をお出迎えすることもありますが、これも私たちの工場の特徴の一つです。
コミュニケーションを重視した相談体制
ものづくりは人と人とのコミュニケーションから始まると私たちは信じています。
図面や仕様書だけでは伝わらない細かなニュアンスや、お客様の製品に込めた思いなど、直接お話しすることで初めて理解できることがたくさんあります。
実際に、あるお客様との打ち合わせで、「実はこの部品にはこんな意味があって…」というお話を伺い、それを踏まえて加工方法を変更した結果、より良い製品に仕上がったという事例もあります。
知識共有への取り組み
私たちはブログを通じて、金属加工に関する様々な情報を発信しています。
「今さら聞けない」シリーズでは、基礎的な加工知識を分かりやすく解説。「プロに聞きました」シリーズでは、業界の裏話や実際のトラブル事例なども紹介しています。
これらの情報発信は、お客様により良いものづくりを提供するための一環でもあります。お客様が私たちの技術や考え方を理解していただくことで、より良いコミュニケーションが生まれ、結果として品質の向上につながると考えています。
お見積り・お問い合わせについて
迅速な対応をお約束
試作開発では時間が重要な要素となることが多いため、私たちはお見積りの迅速な回答を心がけています。
図面をお送りいただければ、通常24時間以内にはお見積りをご回答いたします。特急案件の場合は、お電話でのご相談も承っています。
お電話でのお問い合わせ
TEL: 0568-36-1628 受付時間: 9:00-17:00(12:00-13:00を除く) 休日: 土・日・祝日
お急ぎの場合は、メールよりもお電話をおすすめします。当社の社長は話し好きですので、直接状況をお聞かせいただくことで、より迅速で的確な対応が可能です。
メールでのお問い合わせ
ウェブサイトのお問い合わせフォームからも承っています。図面や参考写真がある場合は、メールでお送りいただくとより詳細なご回答が可能です。
ご相談時にお伝えいただきたい情報
より正確なお見積りのために、以下の情報をお教えください。
- 部品の用途(どんな製品の部品か)
- 必要数量と納期
- 材料のご希望(指定がない場合は用途をお聞かせください)
- 表面処理の必要性
- 精度要求(特に厳しい寸法があれば)
これらの情報により、お客様にとって最適な提案をさせていただくことができます。
おわりに:あなたの「ものづくり」を支えるパートナーとして
ガレージブランドや個人ブランドの皆様が持つ独自のアイデアとビジョンは、これからの日本のものづくりを支える重要な力だと私たちは考えています。
大手メーカーでは生み出せない独創性や、細部へのこだわり、そして何より製品に込められた作り手の思い。これらはすべて、日本のものづくりの伝統と未来を繋ぐ貴重な要素です。
私たち榊原工機は、そんな皆様の「ものづくり」を技術面からしっかりとサポートし、アイデアを確実に形にするお手伝いをいたします。
愛知県春日井市の小さな町工場ですが、30年以上にわたって培ってきた技術力と経験、そして何より「お客様の製品を成功させたい」という強い思いを持って、皆様をお迎えしています。
あなたの素晴らしいアイデアを、ぜひ私たちと一緒に形にしてみませんか?
どのようなご相談でも、まずはお気軽にお声がけください。きっと、お客様にとって最適な解決策を見つけ出すことができると確信しています。
所在地 〒486-0932 愛知県春日井市松河戸町2-5-15
皆様からのご連絡を、心よりお待ちしております。

