パイプ加工に欠かせないフレア加工とは?その目的と精密部品製造の関係を徹底解説

2025年11月27日
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有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

はじめに:配管システムを支える加工技術の世界

私たち有限会社榊原工機は、愛知県春日井市で精密切削加工を専門とする町工場として、日々お客様の製造課題に向き合っています。手のひらサイズの小物部品を中心に、旋盤やマシニングセンタを駆使した高精度な加工を得意としており、「機械部品加工の駆け込み寺」として多くの試作開発や少量生産をお手伝いしてきました。

私たちが製造する部品は、単体で存在するのではなく、より大きなシステムの一部として機能します。特に配管システムにおいては、パイプそのものの加工だけでなく、接続部品の精度が全体の性能を左右します。本記事では、配管接続において重要な役割を果たす「フレア加工」について、その目的と、私たちがどのように関連部品の製造を通じてお客様を支援しているかをご紹介します。

切削加工の専門家である私たちが、なぜフレア加工について語るのか。それは、フレア加工されたパイプと組み合わせる継手部品の製造こそが、私たちの技術が最も活きる分野だからです。

フレア加工とは何か?

フレア加工の基本的な仕組み

フレア加工とは、銅管やアルミ管、ステンレス管といったパイプ状の部材の端部を、円錐状に広げる加工方法です。パイプの先端を専用の工具で押し広げることで、ラッパのような形状を作り出します。

この加工の最大の目的は、高い気密性と液密性を確保した配管接続を実現することにあります。広げられた円錐状の端部を、対応する形状の継手に押し付けることで、パッキンやシール材を使わずに金属同士の接触だけで流体の漏れを防ぐことができるのです。

なぜフレア加工が必要なのか

配管システムにおいてフレア加工が選ばれる理由は大きく分けて二つあります。

一つ目は、高圧環境での確実な密閉性です。エアコンや冷蔵庫の冷媒配管、自動車のブレーキ配管、産業機械の油圧配管など、高い圧力がかかる用途では、わずかな漏れも許されません。フレア加工による接続は、金属同士が面接触することで強固なシール性を発揮します。

二つ目は、メンテナンス性の高さです。溶接やろう付けと異なり、フレア接続は分解と再接続が容易です。配管の点検や部品交換が必要な場合でも、継手を緩めるだけで作業ができるため、現場での作業効率が大幅に向上します。

フレア加工が使われる現場

私たちのお客様の中にも、空調設備メーカー様や自動車部品メーカー様など、フレア加工を活用した製品を製造されている企業が多くいらっしゃいます。彼らが扱う製品では、冷媒ガスやブレーキオイルといった重要な流体を確実に制御する必要があり、配管接続の信頼性が製品全体の安全性に直結します。

フレア加工の品質を決める要素

求められる高精度と均一性

フレア加工の品質は、そのまま配管システムの機能性に直結します。特に重要なのが円錐面の均一性です。

フレア加工によって形成される円錐面は、全周にわたって滑らかで均一でなければなりません。わずかな傷や歪み、表面の凹凸があると、そこから流体が漏れ出す原因となります。高圧がかかる環境では、ミクロン単位の不整合が重大な事故につながる可能性もあるのです。

また、継手との嵌合を考えると、円錐の角度や直径の寸法精度も厳しく管理する必要があります。規格で定められた寸法から外れると、締め付けても十分な密閉性が得られなかったり、逆に締めすぎて部材が破損したりするリスクがあります。

材質特性がもたらす加工の難しさ

フレア加工の難易度は、パイプの材質によって大きく変わります。

特にステンレス材は粘りが強く、フレア加工時に素材が均一に広がりにくいという特性があります。加工中にシワが寄ったり、最悪の場合は割れが発生したりすることもあります。私たちが日々のステンレス加工で培ってきた経験からも、この材質の扱いの難しさは実感しているところです。

また、フレア加工後のパイプ強度も重要な検討事項です。端部を広げる過程で、パイプの肉厚が薄くなります。加工条件を適切に管理しないと、強度不足で使用中に破損する危険性があります。

私たちの役割:フレア接続を支える継手部品の製造

継手部品に求められる精密さ

ここで、私たち榊原工機の出番となります。フレア加工されたパイプの性能を最大限に引き出すためには、それと組み合わせる継手部品の精度が極めて重要なのです。

継手部品は旋盤加工によって製造される円筒形状の精密部品です。特にフレア加工されたパイプが接触するシート面は、完全な真円度と、パイプの円錐角度に正確に合致するテーパー形状が要求されます。このシート面の精度が、接続部の気密性を決定づけます。

私たちが保有する複合加工機を活用すれば、旋削と切削が必要な継手部品を一度の段取りで完結させることができます。これにより、工程間での寸法ズレを最小限に抑え、高い精度を安定して維持できます。

現場での創意工夫と対応力

実際の製造現場では、理想通りにいかないこともあります。例えば、お急ぎの案件で複合加工機が他の仕事で埋まっているような場合です。

そんな時、当社の多能工エンジニアたちは頭をフル回転させます。「マシニングと旋盤を組み合わせて工程を分けよう」「この精度を出すには、こちらの固定方法が良い」といった具合に、利用可能な設備と技術を最大限に活用した加工方法を素早く考案します。

特に小物部品の継手は、切削時の抵抗で歪みやすい形状であることも多く、ワークをしっかりと固定する治具の設計が成功の鍵を握ります。こうした現場での工夫の積み重ねが、お客様からの信頼につながっています。

材質に応じた加工戦略

フレア接続用の継手部品は、用途に応じて様々な材質で製造されます。

ステンレス製の継手は耐食性に優れ、化学プラントや食品機械で重宝されます。しかし前述の通り粘りが強く、切削加工では工具の摩耗が激しくなります。私たちは日々のステンレス加工で培ったノウハウを活かし、適切な工具選定と切削条件の設定で対応しています。

また、高圧環境で使用される継手では、焼入れ鋼が選ばれることもあります。この場合、熱処理後の研削加工によってシート面の最終仕上げを行い、極めて高い寸法精度と表面粗さを実現します。

品質を支える仕上げと表面処理

精密仕上げ加工の重要性

継手部品のシート面には、最高レベルの仕上げ精度が求められます。

焼入れ鋼で製造された高圧用継手の場合、研削加工やホーニング加工といった精密仕上げ技術を適用します。これらの加工により、ミクロン単位の寸法精度と鏡面に近い表面粗さを実現し、フレア加工されたパイプとの接触面における密閉性を最大限に高めます。

仕上げ加工は時間のかかる工程ですが、ここで手を抜くと最終的な製品品質に直結します。私たちは「見えない部分こそ丁寧に」という信念のもと、一つ一つの部品に真摯に向き合っています。

表面処理による機能向上

加工後の表面処理も、継手部品の性能を左右する重要な要素です。

アルミ製の継手にはアルマイト加工を施すことで、耐食性と耐摩耗性を向上させることができます。ステンレス製でも、使用環境によってはさらなる防錆処理が必要な場合があります。

また、ブラスト加工によるピーニング効果で表面の強度を高めたり、特定の表面粗さを作り出して密着性を向上させたりすることも可能です。こうした表面処理の選択肢についても、お客様の用途に応じて最適な提案をさせていただいています。

お客様との信頼関係:一社で解決できる強み

総合的な対応力が評価される理由

お客様から「いろいろな会社に相談するより、榊原工機一社で解決できることが多い」と評価していただけるのは、私たちにとって何よりの喜びです。

フレア加工が関わる配管部品についても、この総合力が発揮されます。ステンレス製の継手本体から、銅合金製のシート部材、樹脂製のパッキンまで、異なる材質の小物部品をまとめてご依頼いただくことができます。

さらに、ワイヤー加工や5軸加工といった様々な加工方法を駆使できるため、複雑な形状の特殊継手にも対応可能です。試作段階から量産まで、一貫してサポートできる体制を整えています。

迅速なコミュニケーションと柔軟な対応

配管システムの開発では、組立後の流体試験で問題が見つかり、急きょ部品の追加工が必要になることもよくあります。

そんな時こそ、私たちの迅速な対応力が活きます。「社長はお話し好きなので、メールで返信を待つより電話で直接相談してください」とお客様にお伝えしているのは、スピード感のある意思決定で最適な解決策を見つけるためです。

納期や加工方法について悩まれているお客様に対しては、現場の状況を踏まえた現実的な提案を心がけています。「この方法なら明日出荷できます」「この精度を出すなら、こちらの加工方法をお勧めします」といった具体的なアドバイスで、お客様の課題解決をサポートしています。

品質認識の共有と安心感

部品調達において重要なのが、品質基準の共有です。

フレア接続の機能性に必要な精度や表面粗さについて、図面だけでは伝わりきらないこともあります。私たちは、お客様との対話を通じて品質要求の背景を理解し、時には「この用途なら、この精度で十分です」「逆にこの部分はもっと厳しく管理した方が良いです」といった提案もさせていただきます。

こうした品質認識のギャップを埋めるコミュニケーションが、長期的な信頼関係につながっていると実感しています。

技術への信頼と創造的な環境

専門誌掲載が示す技術力

私たちの切削加工技術は、月刊「機械技術」2024年5月特別増大号に掲載されるなど、業界からも認められています。

これは単なる自慢ではありません。フレア接続システムを支える精密部品の製造には、確かな技術基盤が必要です。長年の経験と継続的な技術向上の努力が、お客様に安心してご依頼いただける品質を支えています。

相談しやすい雰囲気づくり

「工場っぽくない外観が自慢」と言うと驚かれるかもしれませんが、木のぬくもりと緑にあふれた温かい雰囲気の工場づくりを心がけています。

これは単なる見た目の問題ではありません。試作開発や新しい配管設計について、お客様が気軽に相談できる環境を作ることが目的です。ガレージブランドや個人の発明家の方々も含め、様々な背景を持つお客様が、アイデアの段階から相談に来てくださる関係性を大切にしています。

まとめ:フレア加工の成功は周辺部品の精度から

フレア加工は、配管システムにおいて高圧流体の確実な制御を可能にする重要な加工技術です。しかし、フレア加工されたパイプだけでは配管システムは完成しません。

そのパイプと組み合わせる継手部品の精度こそが、システム全体の性能を決定づけます。わずか数ミクロンの寸法差や表面の微細な傷が、密閉性の低下や流体漏れにつながる可能性があるのです。

私たち榊原工機は、精密切削加工の専門家として、フレア接続を支える高精度な継手部品の製造を得意としています。複合加工機や5軸加工機を含む充実した設備と、多能工エンジニアたちの創意工夫により、お客様の様々な要求に応えてきました。

試作から量産まで、ステンレスから焼入れ鋼まで、標準品から特殊形状まで。フレア加工を含む配管部品でお困りの際は、機械部品加工の駆け込み寺である私たちに、ぜひご相談ください。電話一本で、あなたの課題解決への道筋が見えてくるはずです。