ホームセンターとお風呂屋さんに挟まれた工場?榊原工機が選んだユニークな立地の理由

2025年11月3日
#ブログ
有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

はじめに:工場っぽくない外観が、私たちの自慢です

「工場ってどこにあるんですか?」

初めて当社を訪れるお客様から、よくこんな質問をいただきます。実は私たち有限会社榊原工機は、ホームセンターとお風呂屋さんに挟まれた、ちょっと変わった場所に工場を構えています。

一般的な町工場のイメージといえば、重厚な鉄の扉、無機質なコンクリートの建物、そして工業地帯の一角にひっそりと佇む姿を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、当社の外観は「本当にここが工場なの?」と驚かれるほど、従来の工場のイメージとはかけ離れています。

この「工場に見えない町工場」というスタイルは、私たちが長年かけて築き上げてきた、お客様との信頼関係の基盤となっています。今回は、なぜ私たちがこのユニークな立地と空間作りにこだわるのか、そしてそれが精密切削加工の品質とどう結びついているのかについて、じっくりとお話しさせていただきます。

親しみやすい立地が生む、お客様との距離感

「敷居の高さ」を取り払う工夫

製造業、特に精密加工を手がける町工場というと、どうしても専門的で近寄りがたいイメージがあります。初めて部品加工を依頼される方にとって、工場の門をくぐるのは勇気がいることかもしれません。

「こんな初歩的なこと聞いていいのかな」 「図面がうまく描けていないけど、怒られないかな」 「少量しか作らないのに、相手にしてもらえるだろうか」

こうした不安を抱えながら、問い合わせをためらっている方が実は多いのです。

私たちの工場がホームセンターとお風呂屋さんに挟まれた場所にあるのは、偶然ではありません。この立地は、お客様の日常生活圏内に溶け込み、「ちょっと相談してみようかな」と気軽に思っていただける環境を作るための、私たちなりの工夫なのです。

ガレージブランドや個人クリエイターの強い味方

最近では、ガレージブランドや個人ブランドを立ち上げる方からのご相談が増えています。独自のアイデアや情熱を持っているものの、製造業の知識や経験がほとんどないという方も少なくありません。

ある日、若いクリエイターの方がこんな風におっしゃいました。

「他の工場に問い合わせたときは、専門用語ばかりで何を言っているのかさっぱり分からなくて…。でも榊原工機さんは、この外観を見て『ここなら話を聞いてもらえそう』って思えたんです」

この言葉は、私たちが目指している「機械部品加工の駆け込み寺」としての役割を、まさに表しています。困ったときに頼りやすい存在であること。それが、技術力と同じくらい大切だと考えているのです。

2階の事務所に広がる、木のぬくもりあふれる空間

1階と2階で異なる世界観

当社の建物は、1階と2階で全く異なる顔を持っています。

1階では、最新の5軸加工機や複合加工機、マシニングセンタ、NC旋盤といった精密機械が並び、金属を削り出す製造現場が稼働しています。ここは、ミクロン単位の精度を追求するプロフェッショナルの領域です。

一方、2階の事務所は木の温もりを感じる、まるでカフェのような落ち着いた空間になっています。天然木の床材、観葉植物、柔らかな照明。初めて訪れた方は「本当にここが工場の事務所?」と驚かれます。

この空間設計には、明確な意図があります。お客様との打ち合わせや相談の際、リラックスして本音でお話しいただける環境を作りたかったのです。緊張した雰囲気では、お客様の本当のニーズや困りごとを引き出すことができません。

階段下のピンポンと、黒猫ノア君のお出迎え

初めてお越しになる方へのご案内です。当社に到着されましたら、階段下のピンポンを押してください。2階の事務所へご案内いたします。

運が良ければ、当社の看板猫である黒猫のノア君に会えるかもしれません。ノア君は人懐っこい性格で、時々お客様の膝の上でくつろいでしまうこともあります。

「工場に猫がいるなんて」と驚かれる方もいらっしゃいますが、このノア君の存在も、当社の「あたたかい町工場」というコンセプトを象徴しています。殺伐としがちな製造現場において、人間味あふれる環境を保つことは、実は働く社員のモチベーションや、お客様とのコミュニケーションの質にも良い影響を与えているのです。

「考える多能工」が生み出す、クリエイティブなものづくり

頭を旋盤のように高速回転させて

親しみやすい外観とは裏腹に、当社のエンジニアたちは極めて高度な技術と思考力を持っています。私たちが大切にしているのが「考えて動く多能工のエンジニア」という人材育成の方針です。

多能工とは、旋盤、マシニング、ワイヤーカットなど、複数の加工技術を使いこなせる技術者のこと。しかし当社では、それだけでは十分とは考えていません。重要なのは「考える力」です。

例えば、お客様から特急案件のご依頼をいただいたとします。図面を見て、まず私たちが考えるのは以下のようなことです。

  • この形状なら、角材から削るべきか、それとも丸材からアプローチするべきか
  • 現在稼働中の設備を考えると、どの機械をどう組み合わせれば最短で完成できるか
  • 5軸加工機が埋まっている場合、マシニングと旋盤を組み合わせて同じ品質を実現できないか
  • どの順番で削れば、材料の変形や加工精度への影響を最小限にできるか
  • 固定治具はどうするか、プログラムはどう組むか

私たちのエンジニアは、いつも頭を旋盤のように高速回転させて、ベストな加工法を考えています。この思考プロセスこそが、お客様のご依頼にベストパフォーマンスで応えるための秘訣なのです。

手のひらサイズの部品に特化した強み

当社の得意分野は、「手のひらサイズ」の小物部品加工です。大きな部品よりも、小さく精密な部品の方が、実は加工の難易度が高いことをご存知でしょうか。

小物部品は、わずかな力の加え方や固定方法のミスが、すぐに寸法のズレや変形につながります。また、試作や少量生産の場合、毎回異なる形状や材質に対応する必要があるため、マニュアル通りの作業では通用しません。

だからこそ、当社では材質を問わず様々な加工に対応できる体制を整えています。金属はもちろん、樹脂加工もご相談いただけます。ステンレスのような難削材も、当社の得意分野の一つです。

治具や機構部品など、試作開発に必要なパーツの加工実績も豊富にあります。「1個だけ作りたい」「この素材で本当に作れるか試してみたい」といったご相談も大歓迎です。

バリエーション豊かな設備群が支える柔軟な対応力

社内完結できる強み

当社が「いろいろ相談するよりも榊原工機1社で解決できることが多い」と言われる理由は、社内にバリエーション豊かな設備群を揃えているからです。

主な設備としては以下のようなものがあります。

旋盤加工(NC旋盤加工) 回転する素材を刃物で削り出し、高精度な円筒形部品を製造する加工法です。シャフトやピン、ボルトといった回転対称な部品の加工に適しています。

マシニング加工 フライス加工を含む多軸加工機を使用し、複雑な形状や平面加工を実現します。立体的な形状や、正確な穴あけ、溝加工などが得意です。

ワイヤーカット加工 ワイヤー放電加工とも呼ばれ、細い金属線に電気を流して放電させ、硬い素材や複雑な輪郭を超精密に切断する技術です。金型や治具の製作には欠かせない加工法となっています。

5軸加工機 工具と材料を5つの軸で自由に動かせる高度な加工機です。一度のセッティングで複雑な立体形状を削り出せるため、精度が高く、加工時間の短縮にもつながります。

複合加工機 旋盤加工とマシニング加工を一台でこなせる機械です。部品を付け替えることなく、回転加工と平面加工の両方ができるため、複雑な形状でも高い精度を保てます。

これらの設備を状況に応じて使い分け、組み合わせることで、お客様のご要望に最適な方法でお応えしています。

専門誌にも掲載された技術力

当社の技術力は、業界の専門誌にも認めていただいています。2024年4月28日発行の月刊「機械技術」2024年5月特別増大号に当社が掲載されました。

これは、日本の製造業の中で、当社の少量・試作加工における技術力や柔軟な対応力が評価されている証です。専門誌への掲載は、新しいお客様からの信頼を得る上でも、大きな意味を持っています。

自社製品「SAKAKI Gear」に込めた技術の結晶

5軸加工技術から生まれた高級ゴルフパター

当社では、受託加工だけでなく、自社ブランド製品「SAKAKI Gear」の開発にも取り組んでいます。その代表作が、高級ゴルフパター「SAKAKI PUTTER」です。

このパターは、当社の5軸加工技術の集大成とも言える製品です。ステンレスや真鍮といった素材を贅沢に削り出して製造しており、市販のパターとは一線を画す質感と性能を実現しています。

自社製品を開発する経験は、受託加工の品質向上にも大きく貢献しています。なぜなら、「最終製品として使われるときにどんな品質が求められるか」を、自分たちの身をもって体験できるからです。

例えば、ローレット加工(滑り止めの細かい溝)、ザグリ加工(ボルトの頭を埋め込むための段差)、リーマ加工(穴の内径を高精度に仕上げる)、アルマイト加工(表面処理)といった、最終製品に必要な様々な工程への理解が深まります。

お客様の製品開発をトータルサポート

SAKAKI PUTTERの開発経験は、お客様の製品開発をサポートする際にも活きています。

「こういう製品を作りたいんだけど、どういう加工方法がいいですか?」 「この素材とこの素材、どっちが適していますか?」 「量産を見据えた場合、この設計で大丈夫でしょうか?」

こうした相談に対して、単なる加工屋としてではなく、ものづくりのパートナーとして、実体験に基づいたアドバイスができるのです。

お客様に伝えたい、発注のコツとコミュニケーション術

急ぎの案件こそ、電話でのご相談を

お客様からいただくレビューの中に、非常に参考になるアドバイスがありました。

「もしもお急ぎの場合は、社長はお話し好きなので、メールで返信を待つより電話して事情を説明することをお勧めします」

これは本当にその通りです。特急案件や複雑な試作のご依頼の場合、メールだけではニュアンスが伝わりにくいことがあります。

電話でお話しいただければ、その場で以下のようなことを確認できます。

  • 納期はどのくらい急いでいるのか
  • どこまで精度が必要なのか
  • 予算はどのくらいか
  • 用途は何か(それによって最適な素材や加工法が変わることがあります)
  • 図面では表現しきれない細かな要望

これらの情報を元に、私たちのエンジニアが頭を高速回転させて、最適な加工プランを組み立てます。その場で「この方法なら明後日までに納品できます」といった具体的な提案ができることも多いのです。

図面がなくても大丈夫です

「図面がうまく描けない」という理由で、問い合わせをためらっている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご安心ください。

当社では、手書きのスケッチや、実物のサンプル、あるいは言葉での説明からでも、お客様のイメージを形にするお手伝いをしています。「こんな感じの部品が欲しい」というざっくりとした相談から始めていただいて構いません。

むしろ、初期段階からご相談いただいた方が、製作コストを抑えられたり、より良い代替案をご提案できたりすることも多いのです。

見積依頼のコツ

部品加工の見積依頼をスムーズに進めるコツをいくつかご紹介します。

まず、以下の情報を可能な範囲でお知らせください。

  • 部品の用途(強度が必要か、見た目が重要か、など)
  • 希望納期
  • 製作個数(今回の数量と、将来的な見込み)
  • 予算感
  • 材質の指定(もしあれば)

これらの情報があると、より正確で早いお見積りが可能になります。もちろん、分からないことがあれば遠慮なくご質問ください。

品質管理へのこだわりと、お客様との認識合わせ

「品質」の認識ギャップを埋める努力

部品加工において、実は難しいのが「品質」の認識合わせです。図面通りに作ることはもちろんですが、お客様が期待する品質と、実際の仕上がりの間にギャップが生じることがあります。

例えば、「ピカピカに磨いて欲しい」という要望。これは人によって基準が異なります。鏡面仕上げを期待しているのか、それとも通常の仕上げ面で十分なのか。

当社では、こうした認識のズレを防ぐため、事前の打ち合わせを大切にしています。必要に応じて、サンプルをお見せしたり、過去の製作事例を参考にしていただいたりしながら、お互いの認識をすり合わせていきます。

現場のリアルを伝える情報発信

当社では、ブログを通じて現場のリアルな情報を発信しています。

例えば、「焼入れ鋼に追加工は可能か」といった専門的なテーマや、「マシニング・旋盤・5軸加工機のトラブル事例」といった、普段は語られることの少ない失敗談まで、包み隠さず公開しています。

こうした情報発信は、お客様が部品加工を依頼する際の判断材料になるだけでなく、「この会社は現場のことを正直に話してくれる」という信頼感につながると考えています。

トラブルや失敗を隠すのではなく、それをどう解決したか、今後どう防ぐかを共有することで、業界全体の知識レベルを上げていくことも、私たちの使命だと思っています。

おわりに:駆け込み寺として、これからも皆様のそばに

ホームセンターとお風呂屋さんに挟まれた、工場に見えない町工場。黒猫ノア君が時々顔を出す、木のぬくもりあふれる事務所。そして、頭を旋盤のように高速回転させながら、最適な加工法を追求し続けるエンジニアたち。

これが、愛知県春日井市にある有限会社榊原工機の姿です。

私たちは、これからも「機械部品加工の駆け込み寺」として、お客様の困りごとに寄り添い続けます。大手企業の量産品から、ガレージブランドの試作1個まで。金属でも樹脂でも、手のひらサイズの小物部品なら、まず当社にご相談ください。

部品調達や試作開発で壁にぶつかったとき、「そういえば、あの工場に聞いてみようか」と思い出していただける存在でありたい。そのために、これからも技術を磨き、柔軟な対応を心がけ、お客様との対話を大切にしていきます。

階段下のピンポンを押して、2階の事務所へぜひお越しください。ノア君も、私たちも、心よりお待ちしております。


会社情報

有限会社 榊原工機

  • 所在地:〒486-0932 愛知県春日井市松河戸町2-5-15
  • 電話番号:0568-36-1628
  • 受付時間:9:00-17:00(12:00-13:00を除く)
  • 休日:土・日・祝日

お急ぎの案件やご相談は、お電話が一番スムーズです。お気軽にお問い合わせください。