はじめに:なぜ試作・小ロット生産は難しいのか
「この部品、急ぎで作ってほしいんだけど…」 「試作品だから1個だけなんですが、対応できますか?」
こんなご相談、実は毎日のようにいただいています。
新製品開発やカスタムメイドのニーズが高まる今、少量生産や試作部品の依頼は増え続けています。でも、試作や小ロットの加工って、量産部品を作るのとは全く違う難しさがあるんです。
コスト効率の問題、厳しい納期、そして何より「図面には書かれていない、設計者が本当に求めている品質」をどう実現するか。
この課題、簡単そうに見えて実は奥が深いんです。
一般的な部品加工メーカーさんでは対応が難しいケースも多く、発注担当者の方が「どこに頼めばいいんだろう…」と困ってしまうことも少なくありません。
だからこそ、私たち榊原工機は「機械部品加工の駆け込み寺」として、そうした難題を引き受け、解決に導くことを使命としています。
愛知県春日井市に拠点を置く私たち有限会社榊原工機は、「少量・試作にトコトン強い会社」として、多くのお客様から信頼をいただいてきました。
でも、私たちの強みは単に「技術力が高い」ということだけではありません。
その真髄は、お客様の依頼に常にベストパフォーマンスで応えるために、「クリエイティブにものづくりをする」という独自の考え方にあります。
今日は、私たちがどのように難題を捉え、どんな発想で解決しているのか、現場の生の声をお届けします。
多能工エンジニアの「高速回転する頭脳」とは
考えて動く、それがプロの仕事
「この部品、どうやって作ろうか…」
私たちの工場では、新しい依頼が入るたびに、エンジニアたちの頭がフル回転します。
決してマニュアル通りには進めません。なぜなら、試作や小ロットの依頼は、一つ一つが全く違う要求を持っているからです。
私たちの最大の強みは、「考えて動く多能工のエンジニア」の存在です。
多能工とは、旋盤もマシニングも、ワイヤーカットも扱える、複数の技術を持ったエンジニアのこと。でも、ただ機械を動かせるだけじゃないんです。
部品の製作依頼は、彼らにとって腕の見せ所。常にゼロベースで「この部品を最高の形で仕上げるには?」と考えます。
このプロセスは、まるで製造工程全体をシミュレーションする高速な思考回路のようなものです。
材料選定から始まるクリエイティブ
例えば、ある部品の依頼が入ったとします。
最初に考えるのは「材料をどう選ぶか」。
角材から削った方がいいのか、それとも丸棒から削るべきか。一見些細な違いに見えますが、コストや加工効率、さらには仕上がりの精度まで大きく変わってきます。
ここで重要なのは、「正解は一つじゃない」ということ。
お客様の予算、納期、求める精度によって、ベストな選択は変わります。だから、依頼内容を深く理解した上で、瞬時に判断する必要があるんです。
設備選定と工程設計の妙技
次に考えるのが「どの機械で、どんな順番で加工するか」。
理想を言えば、5軸加工機や複合加工機で一気に仕上げられれば最高です。穴加工まで一台で完結できますからね。
でも、現実はそう甘くありません。
「あ、5軸は今動いてるな…」 「複合加工機も埋まってる…」
こんな状況、工場ではよくあることです。
ここで諦めるのが普通のメーカー。でも、私たちは違います。
「じゃあ、マシニングと旋盤を組み合わせて工程を組み立てよう」
すぐ動ける機械を使って、複数の工程を並行して進める。この柔軟な判断が、納期に間に合わせる秘訣なんです。
最適手順を追求する職人の思考
どの順番で削るのが最も効率的か。 固定治具(部品を固定する道具)はどう設計するか。 プログラムをどう組むか。
プロのエンジニアは、依頼に対して最高の答えを出すために、常に頭を旋盤のように高速回転させて、最適な加工法をクリエイティブに導き出しているんです。
この思考力の深さとスピードこそが、他社が断るような難題や急ぎの特急案件に対応できる、私たちの力の源です。
柔軟な対応を支える多様な設備群
創造的な発想を実現する技術的土台
いくら良いアイデアがあっても、それを実現する設備がなければ意味がありません。
私たち榊原工機は、柔軟な小ロット生産を可能にする、バリエーション豊かな設備群を揃えています。
得意とする精密切削加工の技術は、大きく分けて3つ。
まず、旋盤加工。円筒形の部品を回転させながら削る、基本中の基本です。
次に、マシニング加工。複雑な形状を削り出すのが得意な、万能選手。
そして、ワイヤーカット加工。髪の毛よりも細いワイヤーで、精密に切り出す高度な技術です。
5軸加工機と複合加工機の威力
特に私たちが誇りにしているのが、5軸加工機と複合加工機です。
5軸加工機とは、工具が5つの方向から動ける機械のこと。複雑な三次元形状や、一度の段取りで複数の面を加工できる優れものです。
複合加工機は、旋盤とマシニングの機能を1台に集約した機械。部品を付け替えることなく、様々な加工ができるんです。
これらの高度な設備があるからこそ、材質を問わず様々な精密切削加工に対応できます。
そして何より、この設備構成が、前にお話しした多能工エンジニアのクリエイティブな発想を強力にサポートしてくれるんです。
実例で見る:創造的発想が解決した難題
難題その1:急ぎの特急案件への対応
「明後日までに必要なんです!」
試作開発の現場では、こんな急な依頼が頻繁にあります。
設計変更や急なテストの必要性から、部品調達が急務になる。でも、通常の工程管理では対応が難しい…。
ある日、お客様から「今週中に試作部品が必要」という連絡が入りました。
図面を見ると、通常なら5軸加工機で一気に仕上げたい複雑な部品。でも、5軸は他の案件で埋まっている。
「どうする…?」
ここで私たちの創造性が発揮されます。
「マシニングで外形を削って、旋盤で穴加工を進める。並行作業で時間短縮だ!」
この判断、実は簡単じゃないんです。
固定治具をどう設計するか。 マシニングと旋盤で異なる基準点をどう合わせるか。 プログラムをどう最適化するか。
細部にわたる熟練の経験があって初めて、こうした高度な工程の組み換えが可能になります。
結果、お客様の希望通り、週内に納品することができました。
「本当に助かりました。他社では断られたので、榊原さんが最後の頼みだったんです」
こんな言葉をいただけるのが、私たちの何よりの喜びです。
難題その2:超高精度・複雑な三次元形状の実現
手のひらサイズの小物部品でも、極めて高い精度が求められることがあります。
複雑な曲面や傾斜面を持つ部品の実現は、一般的なマシニング加工だけでは難しい、大きな技術的課題です。
私たちの技術力と創造性は、実は自社製品の開発にも活かされています。
それが、高級ゴルフパター「SAKAKI PUTTER」です。
このパター、5軸加工技術を駆使して削り出された、高精度な製品なんです。
複雑な三次元形状を持つパターの開発は、単なる部品加工を超えた、削り出しの限界に挑むプロジェクトでした。
「パターのフェース面の精度、わずかな誤差も許されない…」 「曲面の美しさも、性能に直結する…」
何度も試作を繰り返し、最高のパフォーマンスを追求しました。
この成功事例は、お客様が要求する複雑な形状や高精度な要件に対し、既存の技術を創造的に応用し、最高水準の仕上がりを提供できる証明でもあります。
また、ワイヤーカット加工という高度な精密加工技術にも精通しており、お客様からの難しいご相談にも対応できる技術の幅を持っています。
難題その3:焼入れ鋼への追加工
「焼入れしちゃった部品に、穴を追加したいんですが…できますか?」
こんな相談、実は結構多いんです。
焼入れ鋼とは、熱処理によって硬度を高めた鋼材のこと。硬くて丈夫な反面、加工がとても難しい素材です。
設計変更や修理のため、こうした加工が極めて難しい材料への追加工が必要になることがあります。
正直に言います。焼入れ鋼への追加加工は、リスクが伴います。
工具が折れやすい。 部品が割れる可能性がある。 加工時間も通常の何倍もかかる。
でも、「できません」で終わらせないのが、私たちのスタイルです。
「この部品、どうしても使いたいんです…」というお客様の声に、できる限り応えたい。
だから、現場のリアルな事情をしっかりお伝えした上で、最適な加工条件を提案します。
切削速度、工具の選定、冷却方法…。
細かな条件調整によって、難しいとされる焼入れ鋼への追加工も実現してきました。
こうした経験の積み重ねが、お客様が持ち込む難題の原因を迅速に特定し、最小限のコストで問題を解決するための創造的な提案を可能にしているんです。
創造性を生み出す「あたたかい町工場」の環境
工場らしくない、木のぬくもりあふれる空間
私たちの工場、実は「工場らしくない」とよく言われます。
榊原工機は、「木のぬくもりと緑にあふれた『あたたかい町工場』」という、ちょっと変わった外観が自慢なんです。
1階で金属加工を行いつつ、2階は木の温もりを感じる事務所になっています。
「工場って、もっと殺風景なイメージだった…」
初めて訪れたお客様からは、こんな感想をよくいただきます。
でも、この環境には理由があるんです。
オープンで訪問しやすい雰囲気だからこそ、お客様が抱える難題を気軽に相談していただけます。
技術的な対話も、リラックスした空間だからこそ深まります。
「図面だけじゃ伝わらないことも、実際に会って話すと分かることがある」
これ、本当にその通りなんです。
迅速なコミュニケーションが難題解決の鍵
電話一本で変わる、問題解決のスピード
試作や少量生産における難題解決の鍵は、実はコミュニケーションにあります。
特に急ぎの案件の場合、複雑な技術的要件をメールだけでやり取りするのは、正直非効率です。
「この形状、加工できますか?」というメールに、文章だけで答えるのは難しい。
品質認識のギャップを生み出す原因にもなります。
だから、私たちはいつもお客様にお伝えしています。
「お急ぎの場合は、メールで返信を待つより、電話してください!」
電話なら、5分で済む話が、メールだと何往復もすることになりかねません。
お客様の意図や背景を正確かつ迅速に理解できれば、私たちエンジニアも最適な加工法をクリエイティブに検討できます。
お話好きな社長が、円滑な対話を支える
実は、私たちの社長は「お話好き」なんです。
技術的な相談はもちろん、お客様の困りごとに親身になって耳を傾けます。
「こんなこと聞いていいのかな…」と思うようなことでも、遠慮なくご相談ください。
この積極的なコミュニケーションの姿勢が、難題を未然に防ぎ、解決へと導く信頼関係の基盤になっています。
実際、私たちは「部品調達における品質認識のギャップ解消法」といったノウハウも発信しています。
お客様と私たち、お互いの理解が深まれば、より良い製品が生まれる。
これが、私たちのものづくりの基本姿勢です。
まとめ:創造性こそが難題を打ち破る力
少量・試作の分野で難題を解決するとは、単に図面通りに削ることではありません。
お客様の制約(時間、コスト、特殊な要件)の中で、技術的な「ベストパフォーマンス」をクリエイティブにデザインし、提供すること。
これこそが、私たち榊原工機が最も大切にしていることです。
多能工のエンジニアたちが「頭を旋盤のように高速回転させて」最適な工程を導き出す。
多様な設備を駆使して、急ぎの案件から複雑な高精度部品まで、あらゆる難題を解決してきました。
難題に直面したとき、それは技術の限界ではなく、既存の解決策の限界かもしれません。
技術力、経験、そして何よりも「クリエイティブに考える力」。
これこそが、試作開発の最前線における真の価値だと、私たちは信じています。
私たちのアプローチは、まるでパズルの達人のようなもの。
バラバラのピース(要求仕様、納期、使用可能な機械)を前にしても、最短で最も美しい完成形(高品質な部品)を瞬時に思い描き、それを実現するために手順を組み替える。
この創造性があるからこそ、「加工に困った。納期に困った。」という発注担当者の悩みを、一社で解決できる「駆け込み寺」として、多くのお客様から信頼をいただいているんです。
もし、あなたが今、部品加工で困っていることがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
図面を見ながら、「これ、どうやって作ろうか」と一緒に考える。
そんなワクワクする瞬間を、私たちは毎日楽しみに待っています。
創造的なものづくりで、あなたの難題を解決する。
それが、榊原工機の使命です。