工場らしくない町工場が目指すもの
愛知県春日井市にある榊原工機は、一般的な工場のイメージとは少し違います。実は、ホームセンターとお風呂屋さんに挟まれた場所にあり、外から見ると「本当にここが工場なの?」と思われることも少なくありません。
私たちは精密切削加工を専門とする町工場ですが、ただ機械で部品を削るだけの会社ではありません。「クリエイティブにものづくりをする会社」として、手のひらサイズを中心とした小物部品の少量・試作に特化しています。ガレージブランドや個人ブランドの試作開発にも力を入れており、金属から樹脂まで、材質を問わず幅広く対応しています。
しかし、私たちが最もこだわっているのは技術や設備だけではありません。それは「働く環境」です。木のぬくもりと緑にあふれた空間づくりを大切にしており、特に2階の事務所は木の温もりを感じられる設計になっています。
なぜ町工場に「木の温もり」が必要なのか。それは、この環境こそが私たちのクリエイティブなものづくりを支える土台だからです。
2階事務所に込めた想い──木の温もりが育む創造性
1階と2階、対照的な空間の役割
榊原工機の建物は、1階と2階で全く異なる雰囲気を持っています。
1階はものづくりの現場です。マシニングセンタ、旋盤、ワイヤーカット放電加工機など、さまざまな工作機械が並んでいます。金属を削る音、機械が動く熱気、そして油の匂い。まさに「工場」という言葉がぴったりの空間です。ここでは5軸加工機や複合加工機を使い、ミクロン単位の精度で部品を加工しています。
一方、2階の事務所は木の温もりを感じられる落ち着いた空間になっています。お客様が来社される際は、階段下のインターホンを押して2階にお越しいただく形です。工場の活気を感じながらも、最終的には静かで温かい雰囲気の中で、じっくりとお話ができる環境を整えています。
なぜ木の温もりなのか
精密切削加工は、非常に高度な思考を必要とする仕事です。お客様からの依頼に対して、どの材料を使うか、どの機械で加工するか、どんな順序で削るか──これらを瞬時に判断しなければなりません。
特に少量・試作の案件では、定型的な手順が通用しないことがほとんどです。一つひとつの案件に対して、ゼロから加工方法を考える必要があります。まるで頭の中で旋盤が高速回転しているかのように、複雑な思考を巡らせています。
この高速思考を支えるのが、落ち着いた環境です。木の温もりは、特急案件や難しい課題に直面したときのストレスを和らげ、冷静な判断を促してくれます。無機質なオフィスでは生まれにくい、ひらめきや創造性が、この空間から生まれていると感じています。
黒猫ノア君も働く仲間
ちなみに、事務所にはたまに黒猫のノア君がいます。彼の存在も、私たちの「あたたかい町工場」というコンセプトを体現しています。お客様からも「工場なのに猫がいるんですね」と驚かれることがありますが、これも私たちらしさの一つです。
ノア君がいることで、堅苦しくない、相談しやすい雰囲気が生まれています。「機械部品加工の駆け込み寺」として、お客様に気軽に相談していただける環境づくりの一環なのです。
多能工エンジニアの頭の中──高速回転する思考プロセス
クリエイティブなものづくりとは何か
私たちが「クリエイティブ」と言うのは、決して芸術作品を作っているわけではありません。お客様の要望に対して、最適な加工方法を創造するという意味です。
例えば、あるお客様から複雑な形状の部品製作を依頼されたとします。このとき、私たちのエンジニアは以下のような思考プロセスを瞬時に行います。
まず材料選定です。ステンレスがいいのか、アルミがいいのか、それとも樹脂なのか。材料が決まったら、次は素材の形状を決めます。角材から削るべきか、丸棒から削るべきか。この判断一つで、加工時間もコストも大きく変わります。
次に機械選びです。理想的には、穴加工まで一台で完結できる5軸加工機や複合加工機を使いたいところです。しかし、特急案件で「今日中に仕上げてほしい」という依頼の場合、その機械が他の仕事で動いていることもあります。そんなときは、すぐに動けるマシニングセンタと旋盤で工程を組み直す必要があります。
加工順序の最適化も重要です。どの順番で削れば精度が高く、効率的で、しかもコストを抑えられるか。これを考えるのは、まるでパズルを解くような作業です。
ワイヤーカット、マシニング、旋盤──技術の使い分け
榊原工機では、旋盤加工、マシニング加工、ワイヤーカット加工を得意としています。これらは全て精密切削加工の一種ですが、それぞれに特徴があります。
旋盤加工は、材料を回転させながら工具で削る方法です。円筒形の部品を作るのに適しています。マシニング加工は、固定した材料に対して工具が動いて削る方法で、複雑な形状に対応できます。ワイヤーカット加工は、細いワイヤーに電気を流して材料を切断する方法で、非常に精密な加工が可能です。
これらの技術を組み合わせることで、1社で幅広い加工に対応できるのが私たちの強みです。「加工に困った、納期に困った」というお客様の声に、柔軟に応えることができます。
フライス加工からリーマ加工まで
他にも、フライス加工、研削加工、リーマ加工、ザグリ加工など、さまざまな加工技術を持っています。
フライス加工は、回転する工具で材料を削る方法です。研削加工は、砥石で材料を磨いて仕上げる技術で、非常に高い精度が求められます。リーマ加工は、穴の内径を正確に仕上げる方法です。ザグリ加工は、ボルトの頭を埋め込むために穴を広げる加工です。
これらの専門用語を聞いても、初めての方にはピンとこないかもしれません。しかし、私たちにご相談いただければ、どの技術が最適かを判断し、わかりやすくご説明いたします。
技術ブログで業界の知見を公開──信頼を築く情報発信
お客様の悩みに寄り添う記事づくり
私たちは、ウェブサイトで技術ブログを公開しています。これは単なる宣伝ではなく、業界の知見を共有し、お客様の課題解決に役立てていただくためです。
例えば「急ぎで部品加工を発注するときのコツ」という記事では、特急対応の実態をプロの視点から解説しています。納期に困っているお客様にとって、非常に実用的な情報です。
「見積依頼のコツと部品加工の見積内訳を徹底解説」という記事では、見積の透明性を高めるために、どのような項目でコストが発生するのかを詳しく説明しています。初めて部品加工を依頼される方にとって、見積書は分かりにくいものです。だからこそ、私たちは積極的に情報を公開しています。
リアルなトラブル事例も共有
「マシニング・旋盤・5軸加工機のリアルなトラブル事例をこっそり公開」という記事では、実際に現場で起きた失敗や対応策を紹介しています。こうした情報は、普通なら表に出しにくいものです。しかし、私たちはあえて公開することで、お客様との信頼関係を築いています。
「中国調達のリアル──現場から見るトラブル事例と対応策」という記事も反響がありました。海外調達を検討されている企業様にとって、現場のリアルな声は貴重な情報です。
基礎知識の解説も充実
「今さら聞けない」シリーズでは、ワイヤーカット加工の基礎知識など、専門用語を分かりやすく解説しています。業界の方でも、他の分野の技術については詳しくないことがあります。だからこそ、基本から丁寧に説明することを心がけています。
こうした情報発信は、私たちが単なる受託加工業者ではなく、業界の知識を持った専門家であることを示しています。お客様に安心して相談していただくための、重要な活動だと考えています。
自社製品SAKAKI Gearが証明する技術力
5軸加工から生まれた高級パター
榊原工機の技術力を象徴するのが、自社製品「SAKAKI Gear」です。中でも5軸加工技術を駆使して作られた高級ゴルフパター「SAKAKI PUTTER」は、私たちの精密切削技術の粋を集めた製品です。
このパターは、ステンレスや真鍮といった金属を削り出して製作されています。美しい曲線、精密な重量バランス、手に吸い付くような質感──これらは全て、長年培ってきた加工技術があるからこそ実現できるものです。
自社製品を開発する過程で、私たちは多くのことを学びました。設計から加工、仕上げまで、全ての工程を自分たちでコントロールする経験は、お客様の試作開発をサポートする際にも大いに役立っています。
ガレージブランド支援の強み
ガレージブランドや個人ブランドの方々が製品を開発する際、試作段階で困ることがたくさんあります。図面の書き方、材料の選び方、加工方法の選択──全てが未知の領域です。
私たちは自社製品開発の経験があるからこそ、単なる加工以上の提案ができます。「この形状なら、こちらの材料の方がコストを抑えられます」「この部分は、加工方法を変えれば強度が上がります」といった、踏み込んだアドバイスができるのです。
業界誌にも掲載された実績
2024年5月特別増大号の月刊「機械技術」に、私たちの取り組みが掲載されました。これは業界内での技術的評価が高いことを示しています。
こうした実績は、お客様に安心して仕事を任せていただくための裏付けになります。私たちは技術力を証明するために、常に挑戦を続けています。
環境がクリエイティブを生む理由
安らぎが冷静な判断を促す
精密切削加工の現場は、常に時間との戦いです。特急案件では、限られた時間の中で最適な加工方法を判断しなければなりません。焦りやストレスがあると、判断ミスにつながります。
木の温もりのある事務所は、そうしたストレスを和らげてくれます。深呼吸をして、落ち着いて考える。そうすることで、より良い判断ができるのです。
集中力を高める空間設計
複雑な部品の加工計画を立てるには、高い集中力が必要です。周囲の雑音や視覚的な刺激が多いと、思考が途切れてしまいます。
2階の事務所は、集中して考えるための空間として設計されています。木の素材が持つ自然な質感は、視覚的にも心地よく、長時間の思考作業をサポートしてくれます。
コミュニケーションの円滑化
温かい雰囲気は、お客様とのコミュニケーションも円滑にします。工場というと、どうしても近寄りがたいイメージがあります。しかし、私たちの事務所は「相談しやすい」とよく言われます。
エンジニア同士の連携も、この環境があるからこそスムーズです。多能工として複数の機械を扱える技術者たちが、お互いに知恵を出し合い、最適な加工方法を見つけ出しています。
お気軽にご相談ください
榊原工機は「加工の駆け込み寺」として、お客様の「困った」を解決することを使命としています。加工に困った、納期に困った、どこに頼めばいいか分からない──そんなときは、ぜひ私たちにご相談ください。
もしお急ぎの場合は、メールよりもお電話がおすすめです。社長は話し好きなので、直接お話しいただければ、すぐに対応方法を考えます。
電話番号は0568-36-1628、受付時間は9:00から17:00まで(12:00から13:00を除く)です。土日祝日はお休みをいただいています。
木の温もりのある2階事務所で、お客様のご来社をお待ちしています。

