部品調達における品質認識のギャップ解消法 〜金属加工のプロが教える円滑な発注のコツ〜

2025年12月5日
#ブログ
有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

導入:発注担当者が直面する品質認識のギャップとは

部品調達の現場において、発注側と加工側の間に生じる「品質認識のギャップ」は、プロジェクトの進行を妨げる大きな障壁となります。このギャップが生じると、納期の遅延、予算の超過、そして何より信頼関係の悪化という深刻な問題を引き起こします。

私たち有限会社榊原工機は、愛知県を拠点として長年にわたり金属加工の現場に携わってまいりました。その中で数多くの発注担当者の方々とお仕事をさせていただき、品質に関する認識の違いがどれほど大きな影響を及ぼすかを実感してきました。

発注担当者の方が図面を持ち込まれた際、私たちが最初に確認するのは、その図面に込められた「本当の要求」です。表面的な寸法や公差だけでなく、その部品がどのような場面で使われ、どのような機能を果たすのか。この理解がなければ、真の意味での品質を実現することはできません。

品質認識のギャップは、単なるコミュニケーション不足だけが原因ではありません。発注側が加工の実態を知らないこと、そして加工側が発注側の真のニーズを汲み取れないこと、この双方向の課題が絡み合って生じるのです。

本記事では、機械部品加工の駆け込み寺的存在として多くのお客様から信頼をいただいている私たちの視点から、このギャップを解消し、円滑な部品調達を実現するための具体的な方法をお伝えします。発注担当者の皆様が直面する課題に対して、現場で培った実践的なノウハウを惜しみなく公開いたします。

なぜ榊原工機が部品調達のパートナーとして選ばれるのか

私たち榊原工機が多くのお客様から信頼をいただいている理由は、単に部品を加工する技術力だけではありません。発注担当者の方々が抱える悩みや課題に真摯に向き合い、最適な解決策を提供し続けてきた実績にあります。

少量・試作案件における柔軟な対応力

私たちが最も得意とするのは、手のひらサイズの小物部品における少量・試作生産です。大量生産とは異なり、少量案件では一品一品に対して最適な加工方法を見極める必要があります。

ある日、お客様から急ぎの試作依頼をいただきました。図面を拝見すると、複雑な形状で複数の加工工程が必要な部品でした。通常であれば5軸加工機で一気に仕上げるところですが、その日は5軸加工機が特急案件で埋まっていました。

そこで私たちのエンジニアは、マシニングセンタと旋盤を組み合わせた工程を瞬時に組み立てました。まず旋盤で外形を削り出し、その後マシニングで穴加工と平面加工を施すという手順です。固定治具も即座に設計し、プログラムを組んで加工を開始しました。

このように、限られた設備の中で最大限のパフォーマンスを発揮するためには、材料選択の段階から考え抜く必要があります。角材から削るのか、丸棒から削るのか。どの機械をどの順番で使うのが最も効率的か。私たちのエンジニアは常に頭を旋盤のように高速回転させ、クリエイティブに最適解を導き出しています。

金属加工だけでなく樹脂加工にも対応できる幅広さも、お客様から評価いただいているポイントです。材質が変わっても、培ってきた加工技術の本質は変わりません。素材の特性を理解し、それに応じた工具選定や切削条件を設定することで、金属と同様に高精度な樹脂部品の製作を実現しています。

多様な設備と技術力による課題解決

品質認識のギャップを解消するためには、お客様の要望に対して「できる」「できない」を明確に伝え、代替案を提示できる技術的な幅広さが必要です。私たちは、バリエーション豊かな設備群を有しており、様々なご要望に応えられる体制を整えています。

NC旋盤加工では、円筒形の部品を高速回転させながらバイトで削り出します。旋削加工は部品加工の基本中の基本ですが、その基本を極めることで、高精度かつ効率的な加工を実現しています。

マシニング加工では、ツールを自動交換しながらフライス加工、穴あけ、ザグリ加工など多様な加工を連続して行います。複雑な形状の部品でも、一度の段取りで効率的に仕上げることができます。

5軸加工機は、より複雑な三次元形状や、一度の段取りで複数の面を加工できる高度な設備です。私たちは高級ゴルフパター「SAKAKI PUTTER」の開発にもこの技術を活用しており、その精度の高さには自信を持っています。

ワイヤーカット加工は、電極線を用いて放電現象により金属を溶かしながら切断する精密加工技術です。この技術により、通常の切削では困難な微細加工や複雑な形状の抜き加工を実現しています。

お客様から「加工に困った、納期に困った」というご相談をいただいた際、複数の業者に個別に依頼するのではなく、私たち一社にまとめてご相談いただくことで、トータルでの最適解をご提案できます。旋盤、マシニング、ワイヤー加工を組み合わせた複合的なアプローチにより、コストと納期の両面で優れた結果をお届けしています。

円滑な発注を実現するための実践的なコツ

品質認識のギャップは、主に発注者が求める「仕様」と、加工者が実現できる「現実」の間に生じます。このギャップを埋めるためには、発注プロセスそのものを見直すことが重要です。

見積依頼段階での情報共有が成否を分ける

発注プロセスにおいて最も重要なのが、見積依頼の段階です。この初期段階での情報共有の質が、その後のプロジェクト全体の成否を左右します。

図面情報は可能な限り詳細にご提供ください。要求する公差、表面処理の種類、材質の指定、そして測定基準まで明確にしていただくことで、私たちは正確な見積と現実的な納期をご提示できます。

特に表面処理については、アルマイト加工、研削加工、ホーニング加工など、様々な選択肢があります。それぞれの処理方法には特徴があり、コストも納期も異なります。お客様が求める最終的な品質と予算のバランスを考慮しながら、最適な方法をご提案させていただきます。

材質の選定も重要なポイントです。ステンレス加工の場合、その種類によって加工性が大きく異なります。また、焼入れ鋼への追加工が必要な場合、その可否や方法について事前に確認が必要です。

あるお客様から、既に熱処理済みの部品に追加工を施してほしいというご依頼をいただいたことがあります。焼入れ後の硬化した材料は通常の加工が困難なため、研削加工やワイヤーカット加工といった特殊な方法が必要になります。事前にこの情報を共有いただいたことで、適切な加工方法と現実的なコストをご提案することができました。

要求品質の優先順位付けも欠かせません。全ての寸法や機能が同じ重要度ではないはずです。どこが絶対に譲れない部分で、どこに調整の余地があるのかを明確にしていただくことで、私たちは最適な加工法を判断できます。5軸加工機を使うべきか、マシニングと旋盤の組み合わせで対応すべきか、そうした判断の根拠となるのです。

突発的な問題への対応と現実的な解決策

プロジェクトが進行する中で、予期せぬ問題が発生することは珍しくありません。設計変更が必要になったり、急に納期が短縮されたり、そうした状況にどう対応するかが、プロフェッショナルとしての真価を問われる場面です。

マシニング、旋盤、5軸加工機など、どの設備にもそれぞれ得意不得意があり、時には予期せぬトラブルも発生します。私たちは長年の経験から、様々なトラブル事例とその対応策を蓄積してきました。

特急案件の場合、通常の工程管理とは異なるアプローチが必要です。設備の空き状況を見極め、複数の機械を並行稼働させることで納期を短縮したり、治具の準備を前倒しして段取り時間を削減したり、様々な工夫を凝らします。

ただし、どんなに急いでも品質を犠牲にすることはできません。特急対応の際も、検査工程は確実に実施し、お客様に安心してお使いいただける品質を保証しています。

国際調達における品質基準の違いへの理解

グローバルな部品調達を行う企業様も増えています。海外調達の場合、品質認識のギャップはさらに深刻化する可能性があります。

中国をはじめとする海外調達では、文化や品質基準の違いから、予期せぬトラブルが発生することがあります。図面の解釈の仕方、公差の捉え方、検査方法の違いなど、国内取引では当たり前だったことが通用しないケースもあります。

私たちは国内の加工業者として、海外調達で発生しがちな問題を熟知しています。もし海外調達でトラブルが発生した場合のバックアップ体制として、あるいは国内外の品質を比較検討する際のベンチマークとして、私たちのサービスをご活用いただくことも可能です。

信頼関係を築くコミュニケーションの重要性

品質認識のギャップを根本から解消するには、技術力だけでなく、円滑なコミュニケーションが不可欠です。

直接対話がもたらす相互理解

複雑な加工や高度な品質要求がある場合、メールだけのやり取りでは限界があります。図面や文字では伝えきれない機微な情報、お客様の真の要望、それらを正確に理解するためには、直接対話が最も効果的です。

私たちは、お急ぎの案件や複雑な内容のご相談については、電話でのやり取りを推奨しています。社長をはじめ、私たちはお客様とのコミュニケーションを大切にしており、直接お話しすることで多くの課題が迅速に解決できると考えています。

「こんな基本的なことを聞いたら恥ずかしい」と思われる必要はありません。加工の専門用語や技術的な内容について、分からないことは遠慮なくお尋ねください。私たちは専門家として、お客様が理解しやすい言葉で丁寧にご説明いたします。

電話でのやり取りでは、お客様の声のトーンや話し方から、どれほど急いでおられるか、どれほど品質にこだわっておられるかといった情報も読み取ることができます。こうした細やかな情報収集が、最適な提案につながるのです。

温かい雰囲気の中で生まれる信頼関係

私たちの工場は、木のぬくもりと緑にあふれた「あたたかい町工場」です。一般的な工場のイメージとは異なる外観で、初めてお越しになるお客様からは驚かれることもあります。

2階の事務所は木の温もりを感じる空間として設計されており、お客様が気軽に立ち寄りやすい雰囲気を大切にしています。実際に工場を見学いただくことで、私たちの設備や体制、そして何より人となりを知っていただけます。

直接お会いして顔を合わせることで、メールや電話では築けない信頼関係が生まれます。この信頼関係こそが、品質認識のギャップを解消する最も強力な手段なのです。

「この人たちになら安心して任せられる」とお客様に感じていただけること。それが私たちの目指す姿です。

発注担当者が知っておくべき加工技術の基礎

高品質な部品を調達するためには、発注担当者の方にも加工技術の基礎知識を持っていただくことが理想的です。専門用語を理解し、加工の制約を知ることで、私たちとの会話がスムーズになり、品質認識のギャップが生じにくくなります。

主要な加工技術の特徴と使い分け

切削加工と旋削加工は、部品加工の基本中の基本です。これらの技術を正確に理解することで、どのような形状の部品がどの程度の精度で製作可能かを判断できるようになります。

ワイヤーカット加工は、一見すると単純な切断技術のように思えますが、実は非常に高度な精密加工技術です。放電現象を利用して金属を溶かしながら切断するため、工具が直接触れることなく加工できます。これにより、薄肉部品や複雑な形状の抜き加工が可能になります。

治具は、部品を機械に固定し、正確な位置決めや加工を保証するための重要なツールです。特急案件で複数の機械を使い分ける場合、適切な治具の設計が加工精度と効率を大きく左右します。私たちは長年の経験から、様々な形状の部品に対応できる治具のノウハウを蓄積しています。

仕上げ加工と特殊加工の知識

リーマ加工は、穴の内径を高精度に仕上げる加工方法です。ドリルで開けた穴をさらに精密に仕上げることで、軸受けやピンの挿入に必要な高い寸法精度と表面品質を実現します。

ブラスト加工は、表面に微細な凹凸を形成することで、密着性の向上や装飾効果を得る加工です。アルマイト処理の前処理としても使用されます。

研削加工は、砥石を用いて高精度な寸法と滑らかな表面を得る加工方法です。焼入れ後の硬化した材料の仕上げにも使用されます。

ローレット加工は、円筒形部品の表面に滑り止めの刻みを入れる加工です。手で握る部分やねじ込み部分に施されることが多く、機能性とデザイン性を両立させます。

バーリング加工は、薄板に穴を開けた周囲を立ち上げて円筒状にする加工です。薄板でも強度の高いねじ部を形成できます。

フレア加工は、パイプの端部を拡管する加工で、配管の接続部などに使用されます。

これらの加工技術の特徴を理解していただくことで、「この部品にはこの加工が必要」という判断ができるようになります。そして私たちに依頼される際、具体的な加工方法を指定していただくことで、より正確な見積と納期のご提示が可能になります。

品質認識のギャップを解消する実践的なアプローチ

ここまで様々な観点から品質認識のギャップについて解説してきましたが、最後に実践的なアプローチをまとめます。

図面と仕様書の明確化

図面は部品製作のための設計図であり、コミュニケーションツールでもあります。公差の記入、表面粗さの指定、材質の明記、熱処理の有無など、必要な情報を漏れなく記載してください。

もし図面の記載内容に不明点がある場合、私たちは必ず確認のご連絡をいたします。「たぶんこうだろう」という推測で加工を進めることは絶対にしません。お客様との認識のズレを防ぐため、小さな疑問でも必ず解消してから加工に取りかかります。

プロトタイプによる確認プロセス

試作段階で実際の部品を製作し、お客様に確認いただくことは、品質認識のギャップを解消する最も確実な方法です。図面上では完璧に見えても、実物を手にして初めて気づく問題もあります。

私たちは少量・試作を得意としているため、まず1個または数個の試作品を製作し、お客様に確認いただいた上で本生産に移行することをお勧めしています。この追加ステップにより、後戻りのリスクを大幅に削減できます。

継続的な改善と学習

一度の取引で完璧な結果が得られるとは限りません。しかし、お客様と私たちが互いに学び合い、改善を重ねることで、次回以降の取引はよりスムーズになります。

過去の事例や課題を記録し、次回に活かす。この継続的な改善プロセスが、長期的なパートナーシップを築く基盤となります。私たちは、一度ご依頼いただいたお客様の情報を大切に管理し、次回のご依頼時にはより迅速かつ的確な対応ができるよう努めています。

まとめ:品質認識のギャップ解消は対話と専門性の融合から

部品調達における品質認識のギャップを解消し、円滑な発注を実現するためには、発注側と加工側の双方が歩み寄る姿勢が不可欠です。

私たち有限会社榊原工機は、少量・試作に強く、多様な設備と多能工のエンジニアを擁する企業として、お客様の要望に対して常にベストなパフォーマンスで応えることを使命としています。材料選択から工程設計、治具の設計、プログラミングまで、全ての工程においてクリエイティブに最適解を追求しています。

発注担当者の皆様には、見積依頼の段階で図面や要求仕様を可能な限り明確にしていただくこと、そして急ぎの案件や複雑な要件がある場合は、積極的に電話などの直接対話を通じて私たちの知見を引き出していただくことをお願いします。

品質認識のギャップ解消は、橋を架ける作業に似ています。発注者側が求める理想の品質という岸と、加工者が立つ現実の実現可能性という岸。その間に、信頼できる専門家という強固な土台を置き、詳細な図面と真摯な対話という鉄骨を組むことで、初めて安定した部品調達というゴールに到達できるのです。

私たちは、単に部品を製作する業者ではなく、お客様のものづくりのパートナーでありたいと考えています。加工に困った時、納期に困った時、品質について悩んだ時、どうぞ遠慮なく私たち榊原工機にご相談ください。機械部品加工の駆け込み寺として、お客様の課題解決に全力で取り組みます。

愛知県を拠点とする私たちですが、全国のお客様からのご相談をお待ちしております。まずはお気軽にお電話ください。お客様の成功が、私たちの喜びです。