階段下のピンポンを押して2階へどうぞ!木の温もりが支える榊原工機のものづくり

2025年11月5日
#ブログ
有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

はじめに:工場らしくない町工場へようこそ

愛知県春日井市にある有限会社榊原工機は、一般的な町工場のイメージとは少し違います。初めてお越しになるお客様からは「工場に見えない」「温かい雰囲気ですね」といったお言葉をよくいただきます。

私たちは、手のひらサイズを中心とした小物部品の少量生産や試作加工を得意としている精密切削加工の会社です。金属から樹脂まで、材質を問わず対応できる技術力を持ち、お客様のご依頼に「いつもベストパフォーマンスで応えるために、クリエイティブにものづくりをする」ことを大切にしています。

立地も特徴的で、ホームセンターとお風呂屋さんに挟まれた場所にあります。外観は工場というより、むしろ普通の建物のようで、初めての方は「本当にここが工場なのか」と戸惑われることもあります。

そして、お客様をお迎えする方法も独特です。1階の現場を脇に感じながら、階段下のピンポンを押していただき、2階の事務所へお越しいただく。このシンプルな導線が、実は私たちの仕事への姿勢を象徴しているのです。

本記事では、この「階段下のピンポン」と「2階の木の温もり」が、どのように当社の技術力とお客様への対応品質を支えているのかをご紹介します。

安心して相談できる空間づくり

緊張を和らげる工夫

機械部品の加工工場と聞くと、無機質で冷たいイメージを持たれる方が多いかもしれません。金属を削る音、油の匂い、重厚な機械設備。確かに、それらは町工場の現実です。しかし、私たちはお客様が気軽に相談できる環境づくりにこだわっています。

なぜなら、榊原工機は「機械部品加工の駆け込み寺」として、お客様の困りごとを解決する役割を担っているからです。「納期に間に合わない」「他社で断られた」「どこに相談すればいいか分からない」。そんな切実な悩みを抱えたお客様が、最初の一歩を踏み出しやすくすることが重要だと考えています。

1階では確かに、マシニングセンタや旋盤、ワイヤー加工機といった専門設備が稼働しています。金属を削る現場の熱気は、まさに町工場そのものです。しかし、階段を上がって2階の事務所に入ると、雰囲気はガラリと変わります。

木の温もりがもたらす効果

2階の事務所は、木の温もりを感じるインテリアになっています。この自然素材の持つ柔らかな雰囲気は、お客様がリラックスして複雑な案件や機密性の高い試作開発について相談できる環境を生み出します。

実際、試作部品の相談では、図面を広げながら「この形状は本当に加工できるのか」「コストを抑える方法はないか」といった、率直な意見交換が必要になります。緊張した空気の中では、本音のコミュニケーションは生まれにくいものです。

木の温もりがある空間だからこそ、お客様は安心して「実はこういう問題があって」と本音を打ち明けてくださいます。私たちも、リラックスした環境でお話を伺うことで、お客様の本当のニーズや背景にある課題を正確に理解できるのです。

ちなみに、たまに黒猫のノア君がお出迎えすることもあります。この存在も、職人気質の堅苦しさを払拭し、「あたたかい町工場」という私たちのアイデンティティを体現しています。

直接対話の大切さ

見積依頼や納期の相談は、メールでも承っています。しかし、もしお急ぎの場合は、電話でのご連絡をおすすめします。社長はお話し好きなので、メールの返信を待つよりも、直接電話で事情を説明していただいた方が、早く正確に対応できることが多いのです。

部品加工の発注は、細かい仕様や納期、コストが複雑に絡み合います。メールでのやり取りでは、どうしてもタイムラグが生じますし、微妙なニュアンスが伝わりにくいこともあります。電話なら、その場でお客様の緊急度を把握し、最適な解決策を提示できます。

この「すぐに対応する」姿勢は、特急案件を数多く手がけてきた経験から生まれたものです。お客様の「困った」に対して、スピーディーかつ正確に応える。そのためには、直接対話による信頼関係の構築が欠かせません。

高速回転する思考プロセス

試作加工に求められる創造性

私たちが「クリエイティブにものづくりをしている」と表現するのには理由があります。特に少量生産や試作加工では、定型的なマニュアルが通用しません。一つひとつの案件に対して、最適な加工方法を考え抜く必要があるのです。

お客様から部品の製作依頼をいただくと、エンジニアの頭の中では、旋盤のように思考が高速回転します。この思考プロセスは、長年の経験と専門知識に基づいて瞬時に行われます。

例えば、ある部品の依頼があった場合を考えてみましょう。まず、支給された材料をどう使うかを検討します。「角材から削るか、丸棒から削るか」という選択だけでも、加工時間やコストに大きく影響します。

次に、どの設備を使うかを判断します。理想的には5軸加工機や複合加工機があれば、穴加工まで1台で完結できます。しかし、もし特急案件で「あいにく今日は2台とも埋まっている」という状況なら、すぐに動けるマシニングセンタと旋盤で工程を組み直す必要があります。

この柔軟な対応こそが、バリエーション豊かな設備群と、多能工エンジニアの強みです。一つの機械しか扱えないのではなく、旋盤もマシニングもワイヤー加工も得意だからこそ、状況に応じた最適解を見つけ出せるのです。

工程設計の奥深さ

加工の順番を決めることも、非常に重要な判断です。「どの順番で削るのがベストか」を考えるのは、パズルを解くような作業です。間違った順番で加工すると、精度が出なかったり、部品が変形したりする可能性があります。

同時に、部品を機械に固定するための治具(じぐ)をどう設計するかも考えます。治具とは、加工する部品を固定するための道具のことで、精度を保つために欠かせないものです。適切な治具を使わなければ、どんなに高性能な機械でも精密な加工はできません。

そして、加工プログラムの作成。マシニングセンタや旋盤は、プログラムによって動きます。このプログラムをどう組むかによって、加工時間や仕上がり品質が変わってきます。

これらの判断を、木の温もりある2階の事務所で、落ち着いて行います。ストレスの少ない環境だからこそ、集中して最適な工程を考え抜くことができるのです。

幅広い技術の組み合わせ

榊原工機の強みは、主要技術である旋盤加工、マシニング加工(フライス加工を含む)、ワイヤー加工(ワイヤーカット)を高度に組み合わせられることです。

旋盤加工は、回転する材料に刃物を当てて削る加工方法です。円筒形の部品を作るのに適しています。マシニング加工は、回転する刃物を材料に当てて削る方法で、複雑な形状の加工が可能です。ワイヤー加工は、細いワイヤーに電気を流して金属を切断する技術で、非常に精密な加工ができます。

これらに加えて、穴の精度を高めるリーマ加工、ネジ頭や座面を平らに仕上げるザグリ加工、表面精度を向上させる研削加工、金属表面処理であるアルマイト加工まで対応可能です。

この多岐にわたる専門知識を、状況に応じて組み合わせる。その判断力こそが、榊原工機の技術力の核心です。

駆け込み寺としての経験値

困りごとに応える実力

「機械部品加工の駆け込み寺」と呼ばれるようになったのは、長年の経験によって培われた問題解決力があるからです。「加工に困った」「納期に困った」というお客様の切実な悩みを、数多く解決してきました。

特急対応の依頼は、非常に難しい判断を迫られます。通常の納期なら余裕を持って最適な工程を組めますが、特急の場合はそうはいきません。今ある設備、今動ける人員で、最短で仕上げる方法を考える必要があります。

例えば、ある日の午後に「明日の午前中までに必要」という依頼が入ったとします。図面を確認すると、通常なら2日かかる加工です。しかし、工程を工夫し、残業で対応することで、何とか間に合わせられるかもしれません。

このとき大切なのは、無理な約束をしないことです。できないことを「できる」と言ってしまえば、お客様に迷惑をかけます。逆に、できることまで「できない」と断ってしまえば、お客様の困りごとを解決できません。

長年の経験があるからこそ、この判断が的確にできるのです。

実用的な情報発信

私たちは、ウェブサイトで技術情報を積極的に公開しています。ただ成功事例を並べるのではなく、発注者や同業者が実際に直面するであろう課題について、深く掘り下げています。

「急ぎで部品加工を発注するときのコツ」では、特急対応の裏側にある現場の努力と判断基準を共有しています。お客様側でできる準備や、伝えるべき情報を知っていただくことで、よりスムーズな対応が可能になります。

「発注担当者必読!見積依頼のコツと部品加工の見積内訳を徹底解説」では、取引のプロセスを明確にしています。見積の内訳を理解していただくことで、なぜその価格になるのかが分かり、安心して発注できるようになります。

「マシニング・旋盤・5軸加工機のリアルなトラブル事例をこっそり公開」では、加工現場で実際に起こったトラブルとその解決策を紹介しています。失敗を隠すのではなく、オープンにすることで、業界全体の知識向上に貢献したいと考えています。

「中国調達のリアル──現場から見るトラブル事例と対応策」では、海外調達を検討しているお客様に向けて、現実的な情報を提供しています。コストだけでなく、品質管理やコミュニケーションの課題についても触れています。

これらの情報は、長年にわたり様々な難題に直面し、それを乗り越えてきた経験があるからこそ発信できるものです。

少数精鋭のワンストップ対応

榊原工機が小物部品の少量・試作に強いのは、多能工エンジニアが少数精鋭で、旋盤、マシニング、ワイヤー加工の全てを得意としているためです。

通常、部品加工を依頼する際は、旋盤加工は旋盤屋さん、マシニング加工はマシニング屋さん、ワイヤー加工はワイヤー加工屋さんと、それぞれ専門業者に分けて発注する必要があります。しかし、これは発注者にとって大きな手間です。

榊原工機なら、様々な加工工程をワンストップで対応できます。ステンレス加工や真鍮などの特殊な材質、高精度の削り出しが要求される部品であっても、最適な工程で仕上げられます。

お客様からは「いろいろ相談するよりも榊原工機1社で解決できることが多い」とのお言葉をいただいています。これは、私たちの多角的な技術力と経験の証です。

技術力を証明する実績

知識の共有を通じた信頼構築

榊原工機では、技術ブログを通じて専門知識を積極的に共有しています。「今さら聞けない」シリーズや「プロに聞きました」シリーズでは、難解な技術テーマを分かりやすく解説しています。

例えば、「ワイヤーカット加工とは?精密加工のプロが解説する基礎知識」という記事では、ワイヤー加工の原理や特徴、適した用途などを、初心者にも分かるように説明しています。

焼入れ鋼への追加工が可能かどうか、部品調達における品質認識のギャップをどう解消するか。こうした一歩踏み込んだテーマに答えることで、技術的な洞察力の深さを示しています。

これらの記事は、単なる宣伝ではありません。業界全体の知識水準向上に貢献したいという思いから、惜しみなく情報を公開しているのです。

自社製品が示す技術力

榊原工機の技術力を物理的に証明しているのが、自社ブランド「SAKAKI Gear」の製品群です。特に、高級ゴルフパター「SAKAKI PUTTER」は、当社の得意とする5軸加工技術から生まれました。

このパターは、削り出しの技法を用いてステンレスや真鍮といった素材から製作されています。ゴルフパターという製品は、重量バランスや打感など、非常にデリケートな調整が求められます。それを精密切削加工で実現できたことは、私たちの技術力の高さを示しています。

自社の最高の技術を結集して製品を生み出す経験があるからこそ、ガレージブランドや個人ブランドの試作開発の相談にも、単なる加工業者としてではなく、開発パートナーとしての視点で助言や提案が可能になります。

「こういう形状にしたいけど、加工できるか」「もっとコストを抑える方法はないか」。そんな相談に対して、製品開発の経験を活かしたアドバイスができるのです。

業界からの評価

2024年4月28日には、月刊「機械技術」の2024年5月特別増大号に当社が掲載されました。この専門誌は、機械加工業界で広く読まれている権威ある雑誌です。外部の専門誌から技術水準を評価されたことは、私たちにとって大きな誇りです。

こうした実績は、日々の地道な努力の積み重ねの結果です。一つひとつの案件に真摯に向き合い、最高のパフォーマンスを追求してきたからこそ、業界からの信頼を得られたのだと考えています。

ピンポンが繋ぐ技術と対話

1階と2階の役割分担

榊原工機の「階段下のピンポンを押して2階へどうぞ!」という歓迎の言葉は、単なる案内ではありません。それは、私たちの仕事への姿勢そのものを表しています。

1階の現場は、技術力の中心地です。高性能な5軸加工機や複合加工機、そして熟練の多能工エンジニアが、治具を駆使して精度を追求しています。旋盤加工、フライス加工、研削加工など、多岐にわたる加工技術が、ここで実際に形になります。

一方、2階の事務所は、その熱き技術を制御し、お客様との信頼関係を築くための司令塔です。木の温もりがもたらす安らぎは、複雑な特急案件や試作開発の課題を、冷静かつ創造的に解決するための集中力を養います。

精密機械の部品を製作する際、最終的な微細な調整を行うためには、周囲の温度や湿度まで管理する必要があります。それと同じように、榊原工機は最高のパフォーマンスを発揮するために、働く環境を整えているのです。

環境が生み出す価値

階段下のピンポンは、お客様を技術の心臓部である1階から、知恵と対話の空間である2階へと、スムーズに導くためのスイッチです。この動線には、大切な意味があります。

まず、1階の現場を感じていただくこと。加工機械が動く音、金属を削る匂い。これらは、私たちが本物の技術を持っていることの証です。その上で、2階の落ち着いた空間でゆっくりとお話を伺う。この流れが、お客様に安心感を与えるのです。

もし、最初から会議室のような無機質な空間でお話ししていたら、どうでしょうか。私たちの技術力や情熱が、十分に伝わらないかもしれません。逆に、騒がしい現場でお話ししていたら、落ち着いて相談できないでしょう。

1階と2階、それぞれの役割がうまく組み合わさることで、最高の対応が可能になるのです。

これからも駆け込み寺として

榊原工機は、これからも「機械部品加工の駆け込み寺」として、お客様の困りごとを解決し続けます。あたたかい町工場という個性を大切にしながら、技術力を磨き続けることが、私たちの使命です。

お客様が抱える課題は、一つとして同じものはありません。だからこそ、定型的な対応ではなく、一つひとつの案件に真剣に向き合う必要があります。木の温もりある空間で、お客様の声に耳を傾け、最適な解決策を考え抜く。

階段下のピンポンを押していただいた瞬間から、私たちとお客様の協働が始まります。2階の事務所で交わされる対話が、1階の現場で形になる。その繰り返しの中で、お客様の製品が完成していきます。

「工場らしくない」と言われる外観も、木の温もりがある事務所も、すべては最高のパフォーマンスを発揮するための環境づくりです。技術だけでなく、心地よいコミュニケーションも大切にする。それが、榊原工機のスタイルなのです。

お問い合わせについて

榊原工機へのご相談や見積依頼は、お気軽にお電話ください。特にお急ぎの場合は、メールよりも電話でのご連絡をおすすめします。お話し好きの社長が直接対応させていただくのが、最も早く正確です。

電話番号: 0568-36-1628 受付時間: 9:00-17:00(12:00-13:00を除く) 休日: 土曜・日曜・祝日

階段下のピンポンを押して、2階の木の温もりある空間へ。そこから始まる、私たちとの協働を楽しみにしています。