先日削ったアルミの部品です。溝が何本も並んでいます。
加工をされている方なら、この写真の削り目(送り目)を見た瞬間に、どう削ったか分かると思います。溝に沿って、線が走っています。つまり横から削っているということです。
【1つ目】なぜ、わざわざ倒したのか
この部品、上から普通に削ろうとすると、溝の深さの分だけ刃物を長く突き出さなければなりません。長い刃物が必要になります。
長い刃物は、届きます。届くのですが——
びびります。刃物がたわんで震える。面が荒れます。
送りを落とすしかない。震えを抑えるために、ゆっくり削ることになります。
その刃物を、買わなければいけない。アルミ用の長いものが手元になければ、わざわざ購入です。
「届く」ことと「きれいに削れる」ことは、別の話です。
【2つ目】倒せば、短い刃物で届く
そこで、ワークを横に倒しました。
倒してしまえば、溝は横を向きます。短い刃物で、真横から入っていけます。長い刃物は要りません。びびりません。刃物も買わずに済みます。
上の写真が、機械に乗せたところです。倒した状態で固定して、そのまま削っています。
【3つ目】5軸は「速い機械」ではなく「向きを変えられる機械」です
5軸加工機というと、複雑な曲面を削る機械、というイメージがあるかもしれません。もちろんそれもできます。
ただ、実際に一番ありがたいのは、こういう地味なところです。
3軸の機械でも、この部品は削れます。ただし、いったん外して、治具を作って、横向きに付け直して——段取りが一つ増えます。段取りが増えるということは、時間が増え、付け直したときのズレの心配も増えるということです。
5軸なら、一度取り付けたまま、機械のほうが向きを変えてくれます。
削れるか削れないかの話ではなく、手間が減るか減らないかの話です。そして町工場にとっては、そちらのほうが大事だったりします。
図面を拝見して「これは倒したほうが早いですね」と思ったときは、そうお伝えします。刃物代を乗せた見積を出すより、そのほうがお互い気持ちがいいので。