提案・試作事例

[機械加工の基本]旋盤加工について、超基本的なことから解説します

今回は、最近多くのお問い合わせをいただいている「旋盤加工」について、榊原工機の榊原社長に一から説明してもらいました。榊原社長は汎用旋盤1台から1989年に創業して2024年に35周年を迎える切削加工のプロです。では、榊原社長、よろしくお願いします!

旋盤加工ってどんな加工?

旋盤加工とは、素材を回転させて、固定した刃物を移動させながら、求める形を作っていく加工です。

イメージとしては、ろくろを回しながら手で陶器の形を整えていくような感じです。ろくろは回転台で粘土を回して手で形を作っていきますが、旋盤では加工対象物をしっかりと掴んで横向きに回転させて、固定した刃物(バイト)を当てて削って形を作っていきます。

また、加工対象が回転するため、棒状・円筒状など丸い製品を作るのに適しています。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も
有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

上の写真の左側、旋盤の原型ともいわれるろくろ。回転機構を横向きにして加工対象物を回転させて、手のかわりにバイトと呼ばれる切削工具を当てて削るのが右の旋盤加工です。

旋盤による旋削加工は、いちばん古い部品加工方法のひとつと言われています。日本では1900年代の初めくらいに初期の旋盤を作るメーカーが出てきたということで、海外ではもっと前から存在していたようです。確かに、旋盤を含む工作機械メーカー「オークマ」の会社沿革を見てみると、1904年に工作機械の製造開始、1918年にはOS形普通旋盤の製造を開始した、とあります。
(参考:オークマ株式会社 会社沿革 https://www.okuma.co.jp/about/history.html

さて、榊原社長が旋盤加工を始めた40年ほど前にはベルト式という旋盤があって、一つのモーターからベルトで動力を取っていたタイプもありました。その後一つの旋盤に対してモーター1個がついた形の汎用旋盤が登場し、続いてNC化されて数値制御できるNC旋盤が出てきて広く普及して、現在の最新モデルではフライス加工もできる複合旋盤の導入が進んでいます。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

ちなみに、榊原工機のロゴは、創業から大切に使っている汎用旋盤のシルエットをモチーフにしています。

このように、歴史を見ると新しい機械がどんどん出てきてはいますが、やっていることが複雑になっているだけで、「加工対象を回転させて固定した刃物で削る」という原理原則は変わっていません。

そして、榊原工機には旋盤の歴史を語る機械が揃い、すべて現役で活躍しています。順番に見てみましょう。

旋盤の原始系「ベンチレース」

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

榊原工機にあるいちばん古い機械がベンチレースです。

この機械には寸法の目安になる目盛りもついておらず、ねじの調整で材料の寸法を出していくタイプの旋盤です。目的の寸法を出すために手で押したりねじで調整したりするのですが、手の押し具合で仕上がりが変わってしまうので、使うには職人の熟練技術が必要です。

ですが、ワンチャッキング(*)でできる単純な加工については、加工にプログラムが必要なNC旋盤よりもはるかに速く加工できることもあります。そのため榊原工機ではNC旋盤の加工後の2次加工などで、今も現役で活躍しています。

(*編集注 チャッキング:旋盤加工においては、ワーク(加工対象物)を把握・固定するための機構のことで、しっかり掴む・固定すること自体をチャックまたはチャッキングと呼びます。ワンチャッキングは、1回だけ掴む=掴み直しが必要ない加工を指します)

手作業+目視で自由度高く加工できる「汎用旋盤」

では、ベンチレースが進化した汎用旋盤を見ていきましょう。こちらの写真が40年近く前に榊原社長が独立した際、勤務先から引き継いだ汎用旋盤です。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

汎用旋盤は、人の手でチャックを締めて(加工対象物を固定して)削る機械で、X軸(加工対象物の径方向)とZ軸(長手方向)に目盛りがついています。

昔はこの設備で量産もしていたのですが、とても大変だったそうです。というのも、この汎用旋盤には刃物台がついていて4本まで取り付けられるのですが、ゼロ点の設定機能などはありませんので、刃物1本ごとに目盛りの設定場所を覚えておく必要がありました。

そこで「荒引加工の刃物はここ」「仕上げの刃物はここ」という感じで目盛りにマジックで書きこんで、その都度設定を変えながら加工していたとのことです。これは量産には向きませんね。榊原社長の「NC旋盤が出てきてから、劇的に楽になった」という言葉も納得です。

さて、榊原工機ではこちらの汎用旋盤も現役で活躍中です。今は1個、2個の単品の仕事を主に担当しているほか、例えば薄板や細棒などのように、NC旋盤だとチャッキングで変形してしまうような繊細な加工のときに活躍しています。

また、センターワークという回転センターで押して加工するようなケースでは、NC旋盤でプログラムした場合、干渉(加工中にぶつからないかどうか)のチェックに時間がかかります。その点汎用旋盤なら簡単な段取りですぐに加工できてしまうので、汎用旋盤の活躍の場は案外多いということです。

ではここで汎用旋盤を使うメリットとデメリットを整理します。

【汎用旋盤のメリット】
・加工プログラムを作る必要がない
・つまり、段取り時間が短い(すぐに加工開始~完了できる)
・変更や追加工が簡単にできる
・薄板など、NC旋盤で固定すると変形しやすいワークをゆるく掴める
・目視しながら加工できるので、センターワークでも干渉の事前チェックが必要ない

【汎用旋盤のデメリット】
・数値制御ができないので量産には向かない
・作業者個人の技術の差が出やすい
・厳しい寸法公差が入っているような高精度品は難しい

それでも1個・2個の少量品や試作品など、汎用旋盤が活躍できる仕事もまだまだありますので、榊原工機ではこれからも大切に使っていきます。

プログラムで正確に加工する「NC旋盤」

続いてNC旋盤を紹介します。NCとはNumeric Control、つまり数値制御できる機械という意味です。汎用旋盤が手作業・手調整で加工していたのに対し、NC旋盤は数値を入力して加工プログラムを作り、コンピュータで制御して加工します。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

NC旋盤の最大のメリットは、安定した精度で加工できる点です。プログラム通りに動くので人の技術レベルに左右されず、誰が作業しても繰り返し同じ製品が出来上がります。また、寸法の補正も容易です。榊原工機の機械では、ボタンを1個押すと5/1000mmずつ調整できるようになっているので、オペレータを選ばず再現性の高い仕事ができます。

ということで、NC旋盤を使うメリットとデメリットを整理していきます。

【NC旋盤のメリット】
・高精度の加工ができる
・加工の再現性が高い=属人性が低い(誰がやっても同じ加工ができる)
→誰がやっても同じ加工を高精度でできるので、量産に向いている
というあたりでしょうか。

【NC旋盤のデメリット】
・1個や2個の少量品でもプログラムがないと加工できない
・プログラム作成には時間がかかる
・プログラム作成にはある程度の技術と経験が必要
・そのため少量品では作業時間がかかり、割高になりやすい

高精度な加工を再現性高く繰り返し実現できるので、量産にはぴったりの機械といえます。

タップ加工や簡単なフライス加工にも対応できる「タレット付NC旋盤」

さて、榊原工機にはちょっと変わったNC旋盤がありますので、紹介したいと思います。森精機製のNC旋盤「NL1500SY」です。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

こちらの機械は一般的なNC旋盤に、追加で「ツールチェンジャー20本仕様」になっています。先ほどご紹介したNC旋盤の特徴に加えて、写真中央に見えるツールチェンジャーに最大20本の刃物を搭載することができます。

本体に回転工具がついているので、加工の種類が変わったときに段取り替えする必要がありません。ワンチャックでNC旋盤プラスアルファの追加工までできてしまうメリットがあります。たとえば、タップ加工やクロス穴加工、スパナかけ2面取り、簡単なフライス加工など、ワークの持ち替えなし、ワンチャッキングで加工できるのは大きなメリットだと思います。

複雑形状を高精度加工できる「複合旋盤 MULTUS」

現時点での旋盤の最終進化系ともいえるのが複合旋盤(複合加工機)です。2023年春には、榊原工機にもオークマ製のインテリジェント複合加工機「MULTUS B300Ⅱ」が仲間入りしました。こちらはNC旋盤でありながら、マシニングセンターの加工もできる機械です。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

この複合加工機は「回転するワークに刃物を当てて削る」という旋盤の基本形を維持しながら、写真中央に見える追加の加工軸により、幅広いバリエーションの加工を実現できます。また、マシニングセンターのように刃物を収納・交換するツールチェンジャーがついているので、ワンチャッキングで様々な加工に対応可能です。

この機械は基本的には旋盤の仕事をしながら、フライスの仕事もこなすところが最大の特徴。例えば、
・マシニングでいう5軸加工のような複雑形状の加工
・斜め穴加工
・円筒状の部品の一部だけを平らに削る加工
・ダイヤモンドのような、多面形状の加工

などの加工を、1台の機械で、しかもワークの持ち替えなしで行うことができます。榊原工機には5軸加工機もありますので、ご依頼いただいた加工の形状や材質、その他の要素に応じて最適な機械を選定して部品加工を行います。

まとめ

榊原社長は「当社では基本的にものづくりが好きな人しか働いていないので、古い機械から最新鋭の機械までを仕事によって使い分けながら、みんなでいい仕事をしていきたいという気持ちでやっています」とのこと。そして「高い機械を使ったから加工費が高くなるというわけではありません」ともおっしゃっていました。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

榊原工機には、ベンチレースから汎用旋盤、NC旋盤、複合加工機まで、バリエーション豊かなフライス加工の機械が揃っています。これらの機械を駆使して、手のひらサイズの加工のお仕事のご依頼には何でも対応しております。
 
特に100個以下の小ロットのマシニングセンターのお仕事は何でも対応できます。また、1個、2個での加工のご依頼もたくさんお請けしています。ご依頼に合わせてベストな機械を選定し、2次元加工、3次元加工を守備範囲広く対応していますので、旋盤加工、旋削加工、複合加工のご相談をお待ちしております。
 
お問合せ:有限会社榊原工機
担当:榊原崇

CONTACT US
お見積り・問合せは
こちらまで
0568-36-1628
受付時間:9:00-18:00(12:00-13:00を除く)
※2024年1月より、9:00-17:00 に変わります
休日:土・日・祝日