提案・試作事例

旋盤加工|NC旋盤と、複合旋盤の違いと使い分けについて聞きました

単品加工とは

切削加工のプロ、榊原工機の榊原社長に突撃して、加工のリアルなところをあれこれ聞いてみるシリーズ。今回は、榊原工機にたくさんある加工設備「旋盤」について掘り下げます。

よく聞く「NC旋盤」と「複合旋盤」にはどのような違いがあり、どう使い分けているのでしょうか? 早速、榊原社長に伺いました。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

旋盤加工の基本をおさらい

まず、旋盤加工について、基本事項をおさらいしておきましょう。

旋盤加工とは、素材を回転させて、固定した刃物を移動させながら、求める形を作っていく加工です。加工対象が回転するため、棒状・円筒状など丸い製品を作るのに適しています。

加工対象は違いますが、陶器でいえば回転するろくろの上に粘土を載せて、手で形を整えていく作業と似ています。ろくろは回転台で粘土を回して手で形を作っていきますが、旋盤では加工対象物をしっかりと掴んで横向きに回転させて、固定した刃物(バイト)を当てて削って形を作っていきます。

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今回比較する「NC旋盤」と「複合旋盤」の基本的な説明もしておきます。

●NC旋盤……数値入力により回転数やバイトの当て方をコントロールする旋盤

●複合旋盤……NC旋盤の標準機能に加えて、工具が回転する機構(回転工具)を追加搭載した旋盤


複合旋盤では、通常旋盤で行う丸物の加工と、主にフライスで行う縦方向・横方向の加工を1台で行うことができます。こちらは複合加工機という呼び方をすることもあります。

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今回の加工対象はこちら

では実際の部品を例に、NC旋盤と複合旋盤にどのような違いがあって、どう使い分けているのかを見ていきましょう。

対象は、銅、50φ、長さ60mm ほどの銅の部品です。

円柱形の本体部分に、横穴と溝が入っています。ねじ部分はM12×P1.75のおねじで、これが一体型の図面になっていました。この部品の加工方法を、実際の工程で見比べていきましょう。

※加工順については、会社やエンジニアによってさまざまな考え方や方法があります。今回は榊原工機で加工する場合の例を紹介します。

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NC旋盤で加工する場合の工程とポイント

NC旋盤でこちらの部品を加工する場合は、このような工程になります。ちなみに材料は、長さ60mmの筒状の銅から加工開始します。

【工程1:NC旋盤】
1-1.最初に丸の外径部分を削って、外径の精度を出す
1-2.筒状の材料からねじ切り部分の近くまで、バリバリ削って粗挽きする
1-3.M12のねじ切り加工をする

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NC旋盤での加工はいったんここまでです。

続いて、一度NC旋盤から部品を外してマシニングセンターに移動し取り付けます。この部品では6個ある溝の角度が指定されているので、インデックス(角度割り出し器)付のマシニングセンターということで、5軸加工機を選定しました。

【工程2:マシニングセンター ※インデックス付】
2-1 角度を割り出しして溝入れ加工を行う(60度ごとに6箇所)
2-2 横の穴あけ加工を行う

【工程3:NC旋盤】
もう一度旋盤に戻り、掴み代を削り落として完成です。

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なお、このやり方は一つの例で、他にもいろいろな加工方法があります。
たとえば掴み代なしで加工する方法もありますし、ねじ部分を掴み代にして最後にねじ切りをするやりかたもあります。溝入れ部分をワイヤーカットで加工すると方法もありますし、360度を6等分にする治具を作れば、割り出し盤のない機械でも加工できると思います。

切削加工の加工順・加工方法は、会社やエンジニアによって本当に千差万別なので、今回は一つの例と思ってくださいね。

複合旋盤で加工する場合の工程とポイント

同じ部品を複合旋盤で加工する場合は、ワンチャッキング、1工程で終わります。材料をセットした後の工程はこのようになります。

【工程:複合旋盤】
・丸の外径部分を削って外径の精度を出す
・粗取りで、外径からねじ山近くまでを粗く削る
・ねじ切り:M12のねじ山を作る
・溝入れ加工(60度ごとに6箇所)
・穴開け加工

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これで最後に掴み部分を切り落とすだけで完成になります。複合旋盤なら機械の移動の必要がなく、ワンチャッキングで短時間で加工を終えることができます。

複合旋盤で加工するメリット・デメリット

 では、改めて複合旋盤で加工するメリットとデメリットを整理してみましょう。

【複合旋盤で加工するメリット】
●複雑な形状の部品を1台で加工できる
●掴み直しがないから、精度が良い
●仕掛品がないから、ムダが出ない
●機械1台で加工できるので、短納期対応しやすい(複数の設備を確保しなくて良い)

このようにメリットが多い複合旋盤ですが、デメリットもあります。というのも、複合旋盤は加工に入る前に、プログラムと干渉チェックを行います。干渉チェックというのは、刃物と製品が加工中にぶつかったりしないかどうか、を確認する作業なのですが、これに結構時間がかかります。少量でのご依頼の時は、加工時間よりも段取りの方が長くなってしまう……ということもあるのです。

その点、NC旋盤とマシニングセンターを使った加工であれば、必要な加工だけ、その加工が得意なマシンで行いますので、こちらの方が早く加工できるケースもあったりします。

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榊原工機では、①NC旋盤とマシニングを使った複数台での加工 ②複合加工機を使ったワンチャッキングでの加工 のどちらにも対応できるので、ご依頼のタイミングによって最善の工法を選定しています。

高い機械を使ったから加工費が高くなるというわけではありませんし、1個、2個など少量の加工のご依頼もたくさんお請けしています。ご依頼に合わせてベストな機械を選定し、2次元加工、3次元加工を守備範囲広く対応していますので、旋盤加工、旋削加工、複合加工のご相談、お待ちしております。

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