図面に「磨き材」と書いておけば、材料費が安く済む──。設計や部品手配をしていると、そんな感覚で「磨き材」を選定している方も多いのではないでしょうか。条件が合えばそのとおりです。ただ、加工の種類や部品サイズ、用途によっては、かえって高くついたり、製品として成り立たなくなったりすることもあります。
そこで今回は「加工に合う材料の選び方」について、愛知県春日井市の金属加工メーカー・榊原工機の榊原社長に聞いてきました。1989年の創業以来、毎日さまざまな図面を加工してきたプロが語る「磨き材」、ぜひご一読ください。
磨き材と6F材、何が違うのか
まずは、よくある2つの材料「磨き材」「6F材」について整理しておきましょう。
・磨き材
鋼材を圧延加工して、決まった寸法の断面に仕上げた材料です。「フラットバー」と呼ばれることもあります。厚みと幅は6×9mm、8×12mmといった規格で決まっていて、長い棒の状態で流通しています。棒の側面4面が仕上がった状態で入ってくるため表面がきれいで、価格は割安です。
なお、磨き材が用意されているのはSS400やS45Cといった一般的な鋼材です。金型に使うような硬い材料では、まず見かけません。
・6F材
直方体の6面すべてにフライス加工を施し、寸法・直角・平面度(平らさの精度)を出してある材料です。榊原工機に入ってくるものは±0.025mmの精度で届きます。あらかじめ6面を加工してある分、割高になります。
そして、「見分けたいときは、表面を見てください」と榊原社長はいいます。
「磨き材かどうかはひと目でわかりますよ。磨き材は縦に筋が入ったような表面になっています(写真上)。6F材は6面が切削されているので、つるっとした加工済の表面になります(写真下)」(榊原社長)
磨き材の弱点「削ると反りやすい」
磨き材には「4面の寸法が出ていて価格が安い」というメリットがある一方で、「反りやすい」という弱点もあります。
「磨き材に横から削りを入れると、反ることが多いんですよ」と榊原社長。
その理由は、鋼材に力をかけて決まった断面に成形する「圧延」という作り方。作り方に由来する特徴として、内部に応力が残った状態で流通しています。応力が残った状態で削って形を変えると、材料内部の力のつり合いが崩れて反りやすいのです。
「真っすぐな材料がほしくて磨き材を選んだのに、加工したら反ってしまった、ということが実際に起こっています。指定された平面度が出ないこともあります。逆に絶対に反るかというとそうでもなく、真ん中あたりをちょっと削るくらいなら大丈夫なこともある。でも全体的には反る確率が高く、それが削ってみるまでわからないところが難しい」(榊原社長)
磨き材が向いている加工と、向かない加工
なるほど……。磨き材の特徴が生きるかどうかは、ケースバイケースということですね。そこで、榊原社長に、磨き材が向いている/向いていない加工を教えてもらいました。
【磨き材が向いている加工】
・6×9mmといった規格の寸法を、そのまま活かせる設計(切って穴を開ける など)
・長い棒に穴あけなど、長辺を削らない加工
・後からネジで締めて使うなど、多少反っても問題にならない部品
【磨き材が向いていない加工】
・面をしっかり削って寸法を出す部品
・平面度や直角度の指定があり、反りが出ると成り立たない部品
・磨き材の規格にない寸法の部品
「長辺を削る加工が入るなら、普通に6F材を買ったほうが安いですよ、という話になります。材料は高くても、加工しやすいので結局は安上がりなんです」(榊原社長)
もうひとつ注意したいのが精度の受け取り方です。「磨き材は4面の寸法がきっちり出ている」といわれることもありますが、実は±0.01mmというような高精度にはなっていません。厳しい公差が必要な面がある場合は、その面は加工する前提で考えて、最初から6F材を選ぶほうが確実です。
実は、大きくなると価格差はあまり出ません
もうひとつ、意外と知られていないのが、サイズによって価格差が縮まることです。あくまで榊原社長の現場の感覚ということではありますが、
「あまり大きいものになってくると、6F材でも磨き材でも、そう値段は変わらなくなってくるんですよね。長さが500mmくらいあるなら、価格はあまり変わらないと思っていいくらいです」(榊原社長)
小さな部品なら「材料費を抑えるために磨き材」という選択に意味がありますが、大きめの部品ではその理由が薄れます。それなら、精度が出ている材料を選んだほうが、後の工程がスムーズに進み、結果的に価格を抑えられることもあります。
「これ、磨き材で大丈夫ですか?」の一言で変わります
さて、榊原社長が頭を悩ませるのは、削る量の多い部品の図面に「磨き材」と指定があるケースです。
「例えば長さ500mmで長辺に精密加工が多く入っている図面でも、磨き材を指定されていることがあります。それが意味があって書いてあるのか、とにかく安く上げたくて書いてあるだけなのか、こちらには意図がわからずに困ることがあります」(榊原社長)
ただ、明らかに合わないと思ったら変えればいいのかというと、そうもいかないのが難しいところです。
「図面に磨き材と書いてあるものを勝手に変えることはできません。付き合いの長いお客様なら阿吽の呼吸で6F材を選ぶこともありますが、新しいお客様では『ちゃんと図面に書いてあるのに、なんで変えたんですか』といわれてしまう」(榊原社長)
だからこそ、と榊原社長は話してくれました。
「最初に『磨き材って書いてあるけど、これで大丈夫ですか?』と一言聞いてもらえれば、削る量が多いなら6F材を、規格寸法にはまるなら磨き材と、その部品に合った選び方をその場でお伝えできます」(榊原社長)
商社を経由していて、加工先と直接やりとりできないこともあると思います。その場合は、図面の備考欄に材料の変更可否を一言書き添えておくだけでも、加工側は動けるようになります。「反りが出ないことが優先」「コスト優先」といった意図さえ伝われば、お互いに手間が省けます。
まとめ:材料選びに迷ったら、榊原工機へ
磨き材は、規格寸法をそのまま活かせる部品なら安く調達できるいい材料です。ただし、削る加工が入れば反りが出やすくなります。大事なのは、安いかどうかではなく「その部品にどんな加工が入るか、どこに精度が必要か」から材料を選ぶことです。
榊原工機は、旋盤加工・マシニング加工・5軸加工・ワイヤーカットを得意とする愛知県春日井市の金属加工メーカーです。直径φ200mm以下の手のひらサイズの部品を中心に、1個からの単品加工・試作品・小ロット品に対応しています。特急のご依頼なら、最短翌日発送も可能です。
図面をお送りいただく際に「この材料指定で問題ないか」もあわせてお知らせください。材料と加工方法をセットでご提案します。名古屋エリアで金属部品の加工先をお探しの方は、お気軽にお問い合わせください。
(インタビュー・構成=ものづくりライター 新開潤子 https://office-kiitos.biz/)
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