図面に「ザグリ」と指示があるけれど、これって実際どうやって加工しているんだろう? ボルトの頭を沈めるための穴だとはわかっていても、加工の中身までは意外と知られていないものです。
そこで今回は「ザグリ穴とは何か、どうやって加工するのか」について、愛知県春日井市の金属加工メーカー・榊原工機の榊原社長に聞いてきました。加工歴40年のプロが、実際に使っている工具や機械の使い分けまで、わかりやすく教えてくれました。
ザグリ穴とは?
まずは基本から。ザグリ穴とは、どんな穴なのでしょうか。
「一番多いのは、六角穴付きボルト(キャップボルト)の頭を沈めるためのザグリですね。ボルトを締めたときに、頭が表面から飛び出さないように、ボルト穴の入り口を一段大きく削っておくんです」と榊原社長。
穴の種類の比較図(左から丸穴/タップ/ザグリ穴/皿ザグリ)で並べると違いがはっきりします。
丸穴:ネジの溝がないストレートの穴
タップ:ネジの溝(ねじ山)が切られた穴
ザグリ穴:六角ボルト(CAPボルト)の頭が出ないように穴の上部を円錐状に段加工して、下部にはネジ山を切った穴。
皿ザグリ:ボルトの頭部分が円錐形状になった皿ネジを使う場合、皿ネジの形に合わせて、穴も斜めに加工します。
ここで大事なのが、深さの考え方です。
「大前提は『ボルトの頭が上に出ない』こと。だから図面の許容範囲に入っていれば、少し深めになるぶんには問題ないことがほとんどなんですよ」(榊原社長)
ただ、図面には「深さ±0.05mm」のように細かい公差(許容される寸法の誤差範囲)が指定されていることもあります。そういうときは図面通り加工することになりますが、その分、価格が高くなってしまうということです。
ザグリ穴の加工に使う3つの工具
では、ザグリ穴は実際にどんな工具で加工するのでしょうか。榊原工機で使っている代表的な3つを見せてもらいました。
・フラットドリル
先端が平らになっているドリルです。底を平らに仕上げられるので、ザグリの座面(ボルトの頭が当たる面)をきれいに仕上げたいときに使います。
・沈めフライス(カウンターボア)
すでに開いている下穴をガイドにして、その周りだけを削り広げる専用の工具です。ザグリ部分だけを沈める加工に向いています。
・段付きドリル
下穴を開ける部分と、その周りを削り広げる部分が一体になった、段のついたドリルです。下穴とザグリを一度の加工で同時に開けられるのが特徴です。
このほか、マシニングセンターではエンドミルを使うこともあります。では、機械ごとにどう使い分けているのか、順に見ていきましょう。
ボール盤で加工する場合——段付きドリルと沈めフライス
まずは、汎用機であるボール盤(*編集注 ドリルを回転させて上下に動かし、穴を開ける機械)を使う場合です。
「ボール盤でザグリをやるときは、段付きドリルが便利です。たとえば下穴が4.5mmで開いていたら、その穴をガイドにして段付きドリルを入れていくと、下穴とザグリが一度にできあがります」(榊原社長)
下穴だけが先に開いている部品には、沈めフライスの出番です。下穴に工具の先端を入れてガイドにし、ザグリ部分だけを削り広げます。
ボール盤は加工プログラムを作る必要がなく、すぐに加工に取りかかれるのがメリットです。ただし、気をつけることもあります。
「ボール盤は手で送っていくので、深さを正確には出しにくいんです。どうしてもコンマ1(0.1mm)くらいのばらつきは出やすい。ただ、ザグリは『頭が出なければいい』という前提の加工が多いので、価格を抑えたい場合はボール盤のほうが向いています。ここは実際の用途や状況に合わせて判断しています」(榊原社長)
次に、マシニングセンターを使う場合です。
「マシニングで加工するときは、エンドミル(*編集注 側面と底面で削れる回転工具)でザグリの形をプログラムで加工します。特殊な工具を使わなくても、プログラムさえ作れば正確な深さで加工できるのが強みですね。底を平らに仕上げたいときは、フラットドリルも使います」(榊原社長)
マシニングセンターの強みは、深さや位置を数値でコントロールできることです。再現性が高く、細かい公差にも対応しやすくなります。
「同じ加工を何個も繰り返すときや、深さの公差が厳しいときは、マシニングのほうが向いていますね。逆に、1個だけサッと開けたいならボール盤のほうが早い。仕事の内容によって使い分けています」(榊原社長)
「本当に必要な精度」を見極める
最後に、榊原社長がザグリ穴の加工でいつも気にかけていることを聞きました。
「ザグリに限らずですが、機能から考えると必要ないくらい厳しい公差や検査がついていることがあるんです。たとえば、本来はボルトの頭が沈めばいいだけの加工なのに、深さをコンマ数ミリの単位で管理しようとすると、三次元測定機で測ったり、専用にプログラムを組んだりと手間が増えて、2,000円でできていたものが3,000円、4,000円になってしまう」(榊原社長)
大事なのは、「その穴が何のためにあるのか」という機能の理解だと榊原社長は言います。だからこそ、お客様と「どこが本当に大事な寸法なのか」を相談しながら、必要な精度でコストを抑えた加工を心がけているとのことでした。
まとめ:ザグリ穴の加工も、単品・小ロットは榊原工機へ
ザグリ穴は、ボルトの頭をフラットに収めるための身近な加工です。榊原工機では、フラットドリル・沈めフライス・段付きドリルといった工具を、ボール盤やマシニングセンターと組み合わせて、用途に合った仕上がりとコストを両立させています。
榊原工機は、旋盤加工・マシニング加工・5軸加工・ワイヤーカットを得意とする愛知県春日井市の金属加工メーカーです。手のひらサイズの小物部品を中心に、単品加工・試作品・小ロット品から特急対応まで幅広く承っています。
「その加工が何のためにあるのか」を見極める職人の目を大切に、図面の意図をくみ取ったご提案をします。ザグリ穴のある部品の加工や、名古屋エリアで金属部品の加工先をお探しの方は、お気軽にお問い合わせください。
(インタビュー・構成=ものづくりライター 新開潤子 https://office-kiitos.biz/)
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