提案・試作事例

[プロに聞きました]AIが加工プログラムを作る時代に、職人技が求められることとは?

「図面をアップロードしたら、AIが工程も段取りも工具選定も考えて、
 機械に指示を出して、製品ができあがって、ロボットが取り出して出荷台に置く……」

こんな技術が「フィジカルAI」のワードとともに、製造現場に本格的に入り込んできました。工作機械メーカー各社がAI×CAM(コンピューター支援製造)の自動生成機能を実装しはじめており、現場のプロたちも無視できない動きになっています。

では、職人の仕事はAIに取って代わられてしまうのでしょうか? 愛知県春日井市の金属加工メーカー・榊原工機の榊原社長に、製造現場のAI事情と職人仕事の行方について、お話を伺ってきました。

有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

いま、製造現場のAIは何ができるのか

まずは現状の話から聞いてみました。

「図面をアップロードしたら加工プログラムを作ってくれて、ツールマガジンに登録した工具の中から最適なものを選んで候補を提示してくれる——そういうシステムが、すでにオークマやMAZAKなどの工作機械メーカーから出ています。オペレーターはボタンを押すだけ、というところまで来ていますよ」(榊原社長)

そこで、製造現場でAIを使うメリットについても聞いてみました。

「たとえばAIによるシミュレーションを使うと、これまでオペレーターが行っていたプログラムの見直し時間が短縮できて、設定ミスも事前に防げます。経験の浅いオペレーターにも、プログラム作成を含めた業務を任せられるようになりそうです。

また、人が考えるよりも効率的な加工条件をAIが見つけてくれるかもしれません。それに、100個、1000個と数があるオーダーなら、初回の設定さえ済ませてしまえば、その後は自動で回してくれる。数が多い仕事ほど、生産性向上の効果は大きくなりますね」(榊原社長)

AIが苦手なこと——複雑な形状、単品小ロット、複数工程をまたいだ判断

一方で、現時点ではAIができることの限界も見えてきました。

「今はまだ『2次元形状の比較的シンプルな加工なら対応できる』という段階だと思います。2次元でも複雑な形になってくるとうまく行かないことも多く、まだまだ難しいようです。AIの世界は進歩が早いので、半年後にはできるようになっているかもしれませんが、少なくとも今はそういう状況です」

AI活用による切削加工の自動化については、加工の数量によって向き不向きがあるようです。

「受注量にかかわらず、1個目を作るためのプログラムや固定治具の準備など、従来のアナログ作業も残っています。例えば1個だけのオーダーの場合、準備に1時間かかって加工が30分というようなケースでは、割に合わない場面も出てくるのではないでしょうか。

私たちのような町工場は、こういう少量のオーダーに対して、プログラムの要らない汎用機などを使って短時間で加工する手段を持っています。こういう隙間が生き残れる場所のひとつかな、と思っています」(榊原社長)

さらに、AIが現時点で対応しきれていない分野として「複数の工程にまたがった工程設計の判断」を挙げてくれました。

「AIは図面を見て、切削加工の工具や加工順は考えられます。でも、切削加工を含む全体の工程設計、例えば焼き入れしてから研磨して、その後ワイヤーカットで仕上げる——というような、工程をまたいだ全体の組み立てと判断は難しいんじゃないかな」

もう少し掘り下げて、工程設計の段階で職人がやっていることを聞いてみました。

「たとえば焼き入れ前の段階で加工しすぎてしまうと、焼き入れ後に材料が歪んで仕上がり寸法が出なくなることがあります。だから、どの工程をどの順番でやるか——先に加工するか、焼き入れてからワイヤーカットするか——という判断は、職人が経験値をもとに行っています。

AIは切削加工の部分だけ見てプログラムを作ってくれますが、その後の工程で何が起きるかまではまだわかっていないのではないでしょうか」

職人が現場で何十年も積み重ねてきた、工程設計の経験と勘所。職人の頭の中にあるものが、ものづくりの現場には不可欠、ということですね。ただ、榊原社長はこうも言っていました。

「前後工程まで含めた私たち職人の知見をAIに覚えさせたら、全体の工程設計もできるようになるかもしれませんね(笑)」

職人の判断が光る例:「ドリルを短くする」 

もう少し身近な話も聞かせていただきました。

「最近も、ドリルで穴を開けていたら、刃がどんどん欠けていくというトラブルがありました。斜面に穴を開ける加工で、刃先に過負荷がかかりやすい状況だったんです。そこで単純にドリルを短くしたら、折れる可能性がぐっと減って解決しました」

長いドリルは細かい振れが出やすく、難しい条件での穴開けでは不利になります。でも、加工プログラム上は「穴を開ける工具」として処理されるだけで、そのドリルが適切な長さかどうかまで気を利かせてくれるとは限りません。

「1ミリの穴を開けるのに、長さ50ミリのドリルを使うようなプログラムが出てきたとしましょう。そんなに長いドリルを使わなくても、短いドリルを使えばいいじゃないか——そういう気づきは、職人の経験から生まれるものです。プログラムの指示通りに動くだけのオペレーターならそのまま実行するかもしれないけれど、職人ならそこに気づいて修正できる」

こうした細かいトライアンドエラーの積み重ね、現場で起きた問題に対して「なぜ?」を考えて答えを見つけ出す力——それが職人の技術の本質だと榊原社長は言います。「AIの知見がまだ溜まっていないところはいっぱいある。そこが勝負どころだと思っています」

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まとめ:単品・小ロット加工は、職人のいる榊原工機へ

AIが製造現場に本格的に入り込んできた今でも、焼き入れによる歪みを見越した工程設計、単品・小ロットへの柔軟な対応、現場のトライアンドエラーによる問題解決など、職人にしかできない仕事の領域は確実に残っています。

榊原工機は、旋盤加工・マシニング加工・5軸加工・ワイヤーカットを得意とする愛知県春日井市の金属加工メーカーです。単品加工・試作品・小ロット品から特急対応まで幅広く承っています。

AIの時代にも変わらず、「モノを見極める職人の目」を大切に加工を続けている榊原工機に、部品加工のご相談をお待ちしております。名古屋エリアで金属部品の加工先をお探しの方は、お気軽にお問い合わせください。

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